昨年1月に発足した第2次トランプ米政権は、米国の製造業の基盤強化や製造業の米国回帰などを目的に、さまざまな関税措置の発動を進めた。高関税をちらつかせられた韓国は、昨年10月の米韓首脳会談で、相互関税の税率引き下げと引き換えに、米国に3500億ドル規模の対米投資をすることで合意した。
これを受け、韓国与党「共に民主党」は昨年11月、3500億ドルの対米投資に必要な対米投資特別措置法を国会に提出した。だが、法案の手続きをめぐって野党と意見が異なり、審議が停滞した。
こうした中、トランプ氏は今年1月、米国との貿易協定で合意した内容を韓国国会が承認せず、履行していないとして、自動車や医薬品などの輸入品について、関税率を再び15%から25%に引き上げると警告した。トランプ氏は当時、自身のSNSに「イ・ジェミョン(李在明)大統領との間で両国にとって素晴らしい合意に達したのに、韓国の議会が承認していない」と不満を吐露した。
これを受け、韓国国会は与野党議員で構成する特別委員会を設置して法案の早期成立を急いだ。そして3月、「対米投資特別法」が国会を通過し、6月に施行した。同法は対米投資の実行の法的な裏付けとなるものだ。造船、半導体、医薬品、人工知能(AI)などを優先投資分野に指定。3500億ドルの投資のうち、1500億ドルはトランプ氏が復活を目指している造船分野に投じ、残る2000億ドルは戦略的投資として米韓で投資先の選定協議を進めてきた。
しかし、対米投資第1号の選定が難航し、米国側は再びいら立ちを募らせた。米政治専門メディアのポリティコが8月に伝えたところによると、ある消息筋は「韓国との交渉がトランプ政権の予想よりも進捗が遅い」と不満を示し、その進捗状況は米国がこれまで交渉してきた国の中でも特に遅いと指摘をしたという。
こうした中、韓国政府は先月、対米投資の第1弾事業としてテキサス州エンシナルでのガス複合火力発電所の建設事業を選定した。
しかし、トランプ氏が先月30日に発表した韓国の対米投資計画では、火力発電所の建設に加え、アラスカ州でのLNG事業や米国内での原発8基の建設も含まれていた。トランプ氏は「韓国及び太平洋地域全体とのパートナーシップをかつてないほど強固なものにするための大きな一歩だ」と述べた。
だが、韓国政府としてはアラスカ州でのLNG開発事業と米国内での原発8基の建設は追加協議が必要な課題との立場で、先月22日の国会でも、両事業は対米投資の「候補事業」にとどまると報告している。
韓国メディアはトランプ氏が「一方的に発表した」、アラスカLNG投資を「既成事実化した」などと報じている。韓国紙の朝鮮日報は「トランプ大統領が投資計画の発表を急ぐ背景には、政治的計算が働いているとの分析が出ている」と指摘した。アラスカ州では中間選挙の上院選が激戦となっており、与党・共和党からは、アラスカLNG開発の積極的な推進を掲げるサリバン上院議員が再選を目指している。朝鮮日報は「トランプ大統領が今回、韓国からの資金が現地の大型エネルギー事業に投じられる計画を発表すれば、サリバン上院議員はこれを雇用創出と地域開発の成果として打ち出せるようになる」とトランプ氏の狙いを解説した。
韓国政府は、特にLNG事業については投資の規模や採算性を慎重に検討したい考えだが、東亜日報は「トランプ氏が公言した投資計画をその後の交渉で覆すのは容易ではないとみられる」と伝えた。
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