フランスワインとガストロノミーを学びに来たとある外国人が、短い滞在中にどのレストランに入ろうかと思案しながら地元のフランス人に尋ねました。
「街の中心地から少し入った道に『レスト・デュ・クール(Restos du Coeur = les restaurants du coeur)』というのがありますがあれはどんなレストランですか?」
 この問いにワインの専門家のフランス人は一瞬答えに詰まった後、「あれはガストロノミーなレストランではない、生活に困っている人が食糧や食事をもらえる場所」という旨の説明をしました。

 フランス全土にあるこの「レスト・デュ・クール」、直訳すると心のレストランというシステムは有名なコメディアンだったコリュシュ(Coluche)が1985年に立ち上げた協会です。
設立の翌年にコリュシュが交通事故で急逝するという予期せぬ出来事が起こりますが、協会は2024年現在もフランス社会にすっかり浸透して活動が続いています。




 ヨーロッパレベルでもこういった活動を支える資金が供出されているようですが、日常生活では年末等の節目にスーパーの出口で「お買い物の一部から寄付を」というキャンペーンがボランティアによって行われます。
そして活動に賛同した買い物客は買い物袋から缶詰やパスタ等の乾物類等をカンパするのです。

 生活支援や社会復帰支援を目的に活動する中で、時に「レスト・デュ・クール」の建物に高級車でやってきて受給資格を証明するチケットを表示する人がいるといった現象は、規模が大きくなった活動に付きものの解決課題でしょうが、様々な救済・共済措置があるフランスはまだまだ希望が見出せる国と言えるのではないでしょうか。

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