崔氏は2022年6月から北朝鮮の外相を務めている。金総書記に近く、米国との交渉に通じた人物として知られる。オーストラリアやマルタ、中国などに留学した後、1980年代半ばに北朝鮮外務省に入り、2009年8月にクリントン元米大統領が北朝鮮の首都ピョンヤン(平壌)を訪問した際に通訳を担当して表舞台に立った。2010年10月に外務省米州局副局長に、2016年には北米局長に就任した。2018年にはキム・ケガン(金桂官)第1次官(当時)の体調不良に対応するための人事として外務次官に昇格した。崔氏が手腕を発揮したのが2018年6月と2019年2月に行われた米朝首脳会談。崔氏は実務の中心を担った。しかしトップ会談は物別れに終わり、崔氏は記者団に「金正恩委員長は交渉意欲を失った印象を受けました」とコメントした。2019年4月の党中央委員会総会で党中央委員会委員に選出され、第14期最高人民会議第1回会議で、国務委員会委員と最高人民会議外交委員会委員に選出された。また、外務次官から第一外務次官に昇格した。そして2022年6月、北朝鮮は朝鮮労働党中央委員会総会で、新外相に崔氏を指名した。北朝鮮では初めて、女性が外相に就任した。
その崔氏は今月14日にロシア入りした。16日昼にはラブロフ外相と会談し、昨年9月に開かれたロ朝首脳会談での合意の履行状況などを話し合った。ラブロフ氏は朝鮮半島情勢にも触れ、「ロシアは平和的解決を望んでいる。北朝鮮に脅威をもたらす米国と同盟国の措置は、解決に向けて何も貢献していない」と非難した。崔氏はその後プーチン大統領と会談。ラブロフ氏との会談内容を伝えた。また、プーチン氏の訪朝日程についても協議した可能性がある。ロシアメディアは、プーチン氏が崔氏に明るく笑いかけ、握手する姿を公開した。韓国紙の中央日報は、ロシアの国営放送「ロシア1」の記者報告を引用して報道。ロシア1のパーベル・ザルビン記者は両者が対面する映像について「声はないが、表情が多くのことを物語っている」と伝えた。
北朝鮮とロシアが関係を強める一方、南北関係は緊張が高まっている。15日に開かれた北朝鮮の最高人民会議で、金総書記は施政演説で、憲法を改正し韓国を「第1の敵対国、不変の主敵と確実にみなす教育強化を明記するのが正しい」と述べた。これに対し、韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は16日の閣議で「北朝鮮政権は反民族的、反歴史的集団だという事実を自ら認めた」と批判。挑発に出れば「その数倍で懲らしめる」とけん制した。
こうした中、韓国紙の東亜日報によると、韓国政府当局は対南(韓国)政策に関して崔氏が担う役割に着目している。ある高官は「今後、崔氏が韓国の相手として出てくる可能性が高く、注目している」と話した。
北朝鮮は崔氏の主導により、対韓国窓口「対南機関」の整理・廃止を進めている。今月1日には崔氏の主宰で整理・廃止に向けた協議会が開かれた。そして、15日に開かれた最高人民会議では、祖国平和統一委員会など、韓国との対話・交流を担う3つの組織の廃止が可決された。
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