<W解説>韓国の新外相に就任したチョ・テヨル氏とは?
<W解説>韓国の新外相に就任したチョ・テヨル氏とは?
今月就任した韓国のチョ・テヨル外相と上川陽子外相が今月23日、電話会談を行った。聯合ニュースが外交部(外務省に相当)の発表として伝えたところによると、両外相は会談で、昨年行われた7回の首脳会談など緊密な意思疎通を通じて日韓関係が正常化されたと評価。今後も関係改善の流れを強化するため外相間の信頼に基づき協力を続けることが重要だとの考えで一致した。チョ氏はパク・チン(朴振)前外相が担った日本や米国との協力を優先するユン・ソギョル(尹錫悦)政権の外交路線をそのまま引き継ぐ見通しだ。

尹大統領は先月、チョ氏を新外相に指名した。尹政権では2022年5月の発足以来、朴氏が外相を務めてきた。朴氏は今年4月の総選挙に立候補するとみられており、交代はそれに伴うものとみられている。韓国では、国会議員選挙に出馬する場合、90日前までに閣僚職を退かなければならない。

新外相のチョ氏は南東部のキョンサンプクド(慶尚北道)ヨンヤン(英陽)出身の68歳。ソウル大学法学部を卒業後、1979年に外務部(現・外交部)に入った。外務部通商第2課長、外交通商部(現・外交部)の通商政策企画審議官、地域通商局長、駐ジュネーブ代表部次席大使、通商交渉調整官(次官補級)などを歴任した。また、2005~07年には、韓国人として初めて、世界貿易機関(WTO)紛争処理パネル(小委員会)の議長を務めた。その後、13~16年には外交部第2次官、16年10月~19年までは国連大使を歴任した。韓国メディアはチョ氏についてこれまでのキャリアから、「通商と多国間外交に精通した元外交官」と紹介している。外相に指名されたチョ氏は「厳しい対外環境を切り抜け、国家の安全保障と繁栄の土台をさらに強固にするために努力を尽くす」と話した。

一方、チョ氏は、元徴用工訴訟をめぐる「裁判取引」への関与疑惑が就任前に浮上した。パク・クネ(朴槿恵)政権下で、司法府が、海外に派遣する裁判官を増やすことなどの見返りに、政権の意向を汲む形で元徴用工らが日本企業を相手取った訴訟を大幅に遅延させた疑惑にチョ氏が関与したと指摘された。チョ氏は当時外交部第2次官を務めており、疑惑の中心人物とされる裁判所側の高官と面会したことが明らかになっている。チョ氏は今月8日に開かれた自身の聴聞会でこの疑惑に言及。当時、裁判所側の高官と面会したことについて「次官としてその問題(徴用工訴訟)によって生じる韓日間の様々な外交的問題に積極的に対処しなければならないという使命感から行動しただけだ」と述べ、司法介入との指摘に反論した。

チョ氏は12日、外相就任式に臨んだ。就任式後に記者会見し、長く、日韓最大の懸案とされ、昨年3月に韓国政府が解決策を示した元徴用工訴訟問題に言及。「韓日関係改善の流れに乗り、日本の民間企業も一緒に船に乗ったつもりで問題を解決していく努力に参加することを期待している」と述べた。韓国政府が昨年示した解決策は、元徴用工を支援する韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が、元徴用工らへの賠償を命じられた日本企業に代わって遅延利子を含む賠償金相当額を原告らに支給するというもの。しかし、今後も日本企業に賠償を命じる大法院判決が続くことが予想される中、財団による支給の財源が足りなくなる可能性が指摘されている。韓国政府は解決策を発表した際、民間企業から寄付を募り基金を設立して財団が賠償金相当額を支払うとしたが、これまでのところ拠出したのは韓国の鉄鋼大手ポスコのみ。日本の被告企業などは資金拠出に参加していない。

チョ氏は23日には、上川外相と電話で会談した。上川氏はチョ氏に対し外相就任の祝意を伝え、「日韓関係の良い流れを確固たるものとすべく、大局的な観点から共に取り組みたい」と述べた。チョ氏は、まず、今月1日に発生した能登半島地震の被害に見舞いの言葉を伝えた。その後、両氏は最近の両国関係や国際的な課題をめぐる協力について意見交換。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の一連の挑発的な行動に深刻な懸念を共有し、日韓両国や米国を含めた3か国で一層緊密に連携していくことで一致した。

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