<W解説>「コーヒー愛飲国」の韓国、専門店が10万店突破=遠からず飽和状態になるとの見方も(写真はイメージです。記事本文は直接関係ありません)
<W解説>「コーヒー愛飲国」の韓国、専門店が10万店突破=遠からず飽和状態になるとの見方も(写真はイメージです。記事本文は直接関係ありません)
「コーヒー愛飲国」とも言われるほどコーヒー文化が根付いている韓国で、コーヒー専門店の数が初めて10万店を超えた。韓国メディアが伝えた。韓国の公共放送KBSによると、ある業界関係者は、コーヒー店の数が増えている背景について、住宅が狭くなり、友人や知人と会話する場所としてカフェが親しまれるようになったこと、コーヒーに含まれているカフェインに中毒性があり、消費量の拡大につながったこと、少ない資金でも開業が可能なため、参入しやすいことなどを挙げている。

 韓国人の大人が1年間に飲むコーヒーの量は世界平均の約3倍ともいわれ、韓国は世界でも指折りの「コーヒー愛飲国」だ。韓国にコーヒーが最初に登場したのは、1896年とされる。ロシア初代公使ウェーベル(1841~1910年)の義姉で、ドイツ人のマダム・アントワネット・ソンタグが、当時、韓国を統治していたコジョン(高宗)皇帝にコーヒーを献上した記録が残っている。高宗はこれより前からコーヒーに精通していたとされる。政治的な混乱の中、高宗は一時、身を守るためにロシア公使館に住んでおり、御用係として仕えたのがソンタグだった。高宗はソンタグに家屋を与えた。この家屋は西洋風に改良され会館となり、1階にはレストラン兼カフェが設けられた。これが韓国初のカフェとされる。

 コーヒーは当時、上流階級だけが口にできる物だったが、1960年代に入ると、喫茶店を意味する「タバン(茶房)」が中流階級の人たちにも開放されるようになった。タバンには文化人や芸術家たちも集まり、様々な目的を持った人たちをつなぐ重要な役割も果たした。1970年代になると、タバンは待ち合わせや出会いの場であり、アーティストらが公演をする大衆文化の発信地にもなった。1980年代にはタバンの競争も激化。コーヒーを自家焙煎して淹れるカフェもこの時期に登場した。韓国においてコーヒーの消費量が急増したのは1990年代後半で、カフェ間の競争も一層激化した。99年には米コーヒーチェーン大手のスターバックスがソウルに韓国1号店をオープンした。

 韓国のカフェ市場規模は米国、中国に次ぐ世界第3位となったが、新型コロナ禍では、街なかのカフェは大打撃を受けた。一方、当時、自粛生活の中でミルクの上にコーヒークリームをのせた「タルゴナコーヒー」が流行した。「タルゴナ」は韓国語でカルメ焼きのような菓子のことで、これと見た目や味が似ていることから「タルゴナコーヒー」との名が付いたとされる。コロナ禍の自粛期間中は、自宅でタルゴナコーヒー作りを楽しむ人たちが増え、その写真や動画がSNSで拡散されると世界で流行。英語でも韓国語そのままのDalgona Coffeeと呼ばれ、スウェーデンのとあるカフェでは「Dalgona」の名でメニューにもなった。また、このブームに乗るかのように、「辛ラーメン」で日本でもなじみのある韓国の大手食品メーカーのノンシム(農心)からは、ベビースターラーメンを固めたような菓子「チョルビン」のタルゴナ味が発売され、話題にもなった。

 コロナ禍では入店してコーヒーを飲む客は激減したが、デリバリーは増え、大手紙・中央日報は2021年3月当時の記事で「コーヒーデリバリーサービスを運営するイディヤコーヒーによると、新型コロナの第3波がピークに達した昨年12月のデリバリーの売り上げは前月比57%増で過去最高を記録した。注文は1日のうち午前11時~午後14時、午後17~20時に集中している。昼食・夕食時間帯の前後に店舗を利用していた既存の顧客の特性がそのまま反映されたわけだ」と伝えている。

 コロナ禍後、韓国のコーヒー専門店は客足が戻り、順調に回復。コーヒー市場の成長はコーヒー(生豆、焙煎豆)の輸入額増加からもうかがえ、韓国関税庁の輸出入貿易統計によると、昨年のコーヒー豆の輸入額は11億1000万ドル(約1785億円)で、2年連続で10億ドルを超えた。5年前の1.7倍、10年前の2.7倍に上るという。

 また、韓国統計庁によると、全国のコーヒー専門店の数は2022年時点で10万729店で、前年比4.5%増となり、10万店を超えた。韓国の聯合ニュースは、「コーヒー専門店の数が急増したのは、小資金でも開業が可能な代表的な業種であり、特別な技術が必要なく、参入しやすいためとみられる」と分析した。一方、「業界では、店舗数が増えすぎたため、遠からず飽和状態になるのではないかとの見方もある」と伝えた。

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