韓国では、旭日旗は「第2次世界大戦当時、アジア侵略に使用された日本軍の旗であり、多くの国に歴史の傷を思い起させる明白な政治的象徴」と捉えられている。こうしたことから、これまで幾度となく「旭日旗騒動」が起こってきた。昨年12月には、国際サッカー連盟（FIFA）のワールドカップ公式SNSのアカウントで日本の選手を紹介する画像の背景に、一時、旭日旗が用いられ、韓国のネットユーザーらからFIFAに抗議の声が相次いで寄せられた。その後、画像は旭日旗が削除された。今年5月には、国際パラリンピック委員会（IPC）が公式ユーチューブチャンネルで配信したパラアイスホッケー世界選手権の試合の映像で、日本の選手が旭日旗のロゴとともに表示テロップで紹介されたとして、大韓障害者体育会がIPCに抗議した。
さらに、先月6日、韓国は殉国者と戦没将兵を追悼する「顕忠日」を迎えた中、釜山市内のとあるマンションに旭日旗が掲げられ、物議を醸した。「顕忠日」は祝日で、毎年この日は朝鮮戦争やベトナム戦争により戦死した兵士や日本統治時代の独立運動家らが祀られた国立顕忠院で追悼行事が執り行われる。また、韓国全土にサイレンが鳴らされ、国民は祖国のために命を捧げた人々に黙とうをささげる。追悼行事が行われる国立ソウル顕忠院は、約44万坪の敷地に、墓域が国家元首、愛国志士、国家有功者、軍人・軍務院、警察官、一般人、外国人の7つのエリアに分かれて造成されている。今年もユン・ソギョル（尹錫悦）大統領らも出席して式典が開かれた。だが、国のために戦い、命を捧げた人たちを悼む日に旭日旗が掲げられ、韓国のネットユーザーからは「正気か」などと怒り、呆れる声が上がった。しかし、前述のように、韓国において旭日旗に関連する処罰法は存在しない。マンションの管理事務所には当時、苦情の電話が多数寄せられたが、事務所関係者は掲揚を止めさせることもできず、対応に苦慮した。
騒動が大きくなるや、旭日旗を掲げた住民は「旭日旗を掲揚した私の愚かな行動によって心に傷を負ったすべての方に謝罪します。深く反省しており、今後は繰り返さないことを約束します」などとする謝罪文を発表し、旭日旗を撤去した。住民は掲揚の目的は親日を示すためではなく、行政区との間で続いている対立を多くの人に知ってもらうためだったと説明。「事件の関心を引くために旭日旗を掲揚したことは愚かな判断であり、改めてお詫びします」とした。
しかし、「旭日旗は戦犯旗」との一方的な主張に基づき、旭日旗騒動は近年エスカレートしている。著名人が着ている服の柄や、企業の宣伝看板のデザインなど「旭日旗に似ている」という理由で一部の韓国人が度々問題提起している。
韓国紙の中央日報などが今月2日に伝えたところによると、最大野党「共に民主党」のムン・クムジュ議員が、旭日旗など軍国主義を象徴しているとされる物の使用を処罰するための刑法一部改正案を発議した。改正案は、軍国主義を象徴しているとされる物を製作、流布、または公共の場所で使用したり、住居地で他人に見えるように使用したりする行為を禁止し、違反した者に2000万ウォン（約233万円）以下の罰金を科すという内容。また、旭日旗の掲揚に関して、自治体の長が撤去を命令したり、これを除去したりできる法的根拠も盛り込まれた。
釜山のマンションでの一件に触発されて発議された改正案だろう。愛国心高まる「顕忠日」に旭日旗が掲げられた先月の騒動は不適切ではあるが、発議はいささか短絡的ではないだろうか。
Copyright(C) wowneta.jp
