<W解説>軍事協力を拡大させる露朝、北朝鮮はウクライナに兵士を派遣するのか?
<W解説>軍事協力を拡大させる露朝、北朝鮮はウクライナに兵士を派遣するのか?
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、今月6日付の読売新聞は、北朝鮮の兵士がウクライナに派遣される可能性があることを報じた。同紙が露朝関係に詳しい関係筋への取材に基づき伝えたところによると、ロシアのプーチン大統領が北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記との首脳会談で、金総書記にウクライナへの派兵を求めたとの情報があるという。

両首脳は昨年9月、ロシア極東のボストーチヌイ宇宙基地で首脳会談を行った。金総書記は、ロシアによるウクライナ侵攻に支持を表明し、プーチン大統領もミサイルの関連技術を北朝鮮に提供することを示唆するなど、両国の軍事的な連携を印象づけた。ロシアは一昨年2月末にウクライナを侵攻し、今なお激しい戦闘が続いている。長期化する中で弾薬の在庫が消費量に追いつかず、ロシアは北朝鮮から弾薬を確保しているとみられる。昨年9月の金総書記の訪露には、軍部の実力者や軍需産業の責任者が多数同行したことが確認されている。読売新聞によると、当時の会談でプーチン大統領は武器の供給に加え、兵力支援も求めた。金総書記は武器の供給は承諾したが、派兵については「追加の議論が必要だ」として、態度を明らかにしなかったという。

先月、プーチン大統領が北朝鮮を国賓として訪問した。プーチン氏が訪朝するのは2000年7月以来、24年ぶりのことだった。当時の米CNNは「欧米への反感を共有する両国の軍事協力強化に国際的な懸念が出る中で、露朝の連携が深まっていくことを予想させる光景だった」と伝えた。会談で両首脳は、ロシアと北朝鮮のどちらか一方が戦争状態になった際、軍事的な援助を提供することなどを明記した「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。条約は23の条項からなり、第4条では集団的自衛権を認める国連憲章と、自国の法律に従い、「どちらか一方が、武力侵攻を受け、戦争状態になった場合、遅滞なく、保有するすべての手段で軍事的及びその他の援助を提供する」と明記した。8条では「戦争を防止し、地域と国際的な平和と安全を保障するための防衛能力を強化する目的で、共同措置を取るための制度を設ける」などとしている。ロシアとしては、ウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、条約によって北朝鮮との軍事協力を拡大させたい思惑があるとみられる。

これを受け、国連の安全保障理事会は先月28日、緊急会合を開いた。各国からは新条約に対する懸念の声が相次いだ。米国のロバート・ウッド国連代理大使は「ここにいる全員が重大な懸念を抱いている」と強調した。山崎和之国連大使も、新条約は「国際社会にとって重大な懸念だ」と述べた。一方、ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使は新条約について「朝鮮半島での戦争再発リスクを軽減させるものだ」と主張。北朝鮮のキム・ソン(金星)国連大使は、「ロシアとの協力関係を強化・発展させていく」と強調した。

露朝が結んだ同条約は、新たな軍事同盟とも言えるもので、軍事協力のさらなる拡大が懸念される中、読売新聞は今月6日、「北朝鮮が、ウクライナ国内のロシアの占領地域に工兵部隊などの兵力を派遣するとの見方が浮上している」と伝えた。プーチン大統領が昨年9月に金総書記と会談した際、ウクライナに北朝鮮の兵士を派遣するよう要請したとされるが、同紙が露朝関係に詳しい関係筋への取材を基に伝えたところによると、プーチン大統領は先月の訪朝の際にも金総書記に対し、改めて兵力の支援を求めたという。米韓両政府は今後の露朝の動向を注視している。

一方、プーチン大統領は先月20日、「この紛争で互いの能力を利用することを我々は求めていないし、誰も提案していない。必要ない」と述べ、北朝鮮の兵士をウクライナに派兵する必要はないとの考えを示している。

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