<W解説>韓国はなぜアーチェリーで「世界最強」になれたのか?=パリ五輪では、まず団体で男女とも金
<W解説>韓国はなぜアーチェリーで「世界最強」になれたのか?=パリ五輪では、まず団体で男女とも金
パリ五輪で、韓国がアーチェリーの団体戦で男女とも金メダルを獲得した。女子は五輪10連覇、男子は3連覇の偉業を達成。韓国はいかにしてアーチェリーの競技力を「世界最強」にまで高めてきたのか。

アーチェリーは、離れた場所に置かれた的を狙って弓で矢を放ち得点を競う競技。的には同心円が描かれており、中心に近いほど高得点となる。最高点の10点が与えられる最も小さな円は直径12.2センチで、CDほどの大きさしかない。五輪正式競技になったのは1900年のパリ大会で、1920年のアントワープ大会から正式競技から外れたが、1972年のミュンヘン大会で再び採用され、現在まで実施されている。

28日、パリのアンヴァリッドで女子団体決勝戦が行われ、韓国はイム・シヒョン(韓国体育大学)、チョン・フニョン(インチョン市庁)、ナム・スヒョン(スンチョン市庁)で構成する代表チームが出場した。オランダとの準決勝に5-4で勝利し決勝に進出した韓国は中国と対戦。中国は今年だけで2回もワールドカップで韓国に勝利している強敵で、今回も簡単に勝つことはできなかった。韓国は4-0でリードするも追いつかれ、その後のシュートオフ(延長戦)の末、勝利(5-4)をつかみ取った。アーチェリーで団体が初めて実施された1988年のソウル大会から10大会連続で金メダル獲得という偉業を成し遂げた。エースのイムは、試合後の報道陣のインタビューに「大韓民国にとって(10連覇は)王座を守ることだが、40年が経ってメンバーが変わった今、私たちには新しい挑戦であり、目標だった」と語った。

この偉業に、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領も29日、自身のフェイスブックを通じて祝福。「私も最後のシュートオフまで手に汗を握って応援しながら見守った。3人とも五輪の経験はなかったが、どの大会よりも厳しいという韓国代表の選抜戦を勝ち抜き、『韓国1位がまさに世界1位』であることを改めて証明した」と喜んだ。韓国の著名人たちも祝福。グループ「東方神起」のチャンミンは自身のインスタグラムに「すごい。10連覇最高!」と投稿した。

女子団体に続き、男子団体も29日(現地時間)の決勝でフランスを5-1で下し、2016年のリオ大会、2020年の東京大会に続いて3連覇を成し遂げた。準々決勝では日本と対戦。韓国は第1セットから正確に的を射抜いてリードを広げ、6-0で勝利した。男女ともに団体で金メダルを獲得したことを、韓国紙の中央日報は「神弓コリア」との表現を使って報道。公共放送KBSはここまでの韓国選手団の戦いぶりに関連し、「伝統的な『お家芸』で成果を収めている」と報じた。

韓国はどのようにしてアーチェリーを「お家芸」とするまでに競技力を高めてきたのか。

韓国は自国で初開催となった1988年のソウル五輪に向け、当時、様々な競技の選手の育成強化を図った。韓国政府が1980年代に自国の有力企業に支援を求める中、賛同した韓国の巨大企業、現代グループが支援対象競技として選んだのがアーチェリーだった。同グループは長年にわたり資金援助を続けている。同グループが大韓ア-チェリー協会の支援のために投じた額は40年間に500億ウォン(約55億6300万円)にも上るという。同協会の歴代会長は同グループから出しており、現代自動車グループのチョン・ウィソン(鄭義宣)会長は、2005年から協会会長を務めている。

また、韓国ではアーチェリーの競技人口が比較的多く、小学校から社会人まで多くのクラブやチームが存在する。アーチェリースクールもある。選手の育成に力を入れており、小学生から基礎技術を徹底的に指導するという。

それだけに選手層が厚く、アーチェリーで韓国代表になること自体が難しい。前回の東京大会で3個の金メダルを獲得したアン・サンは3月の代表選考会で振るわず、今大会の出場権を逃した。アンが出場権を逃したことに、韓国では当時、衝撃が走ったが、アンでさえ出場が容易でないほど、韓国ではアーチェリーで国家代表になることが五輪でメダルを獲得するよりも難しいことを改めて示した。

韓国は今大会の目標を「金メダル5個以上、15位以内」と設定。しかし、大会第5日目までにアーチェリーで2個、射撃で2個、フェンシングで1個の計5個の金メダルを獲得し、早くも目標を達成した。この後、アーチェリーの個人戦が続くほか、テコンドーなども注目で、さらなるメダル獲得が期待される。

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