韓国では今年4月に総選挙があり、開票の結果、与党「国民の力」が108議席、最大野党「共に民主党」が175議席を獲得。尹政権を支える「国民の力」が大敗する結果となった。野党勢力は、憲法改正案や大統領の弾劾を求める議案を可決できる200議席には届かなかったが、引き続き、政局の主導権を握れることになった。
5月30日に第22代国会の任期が始まった。開院式は当初、7月5日に予定されていたが、与野党の対立で開かれないまま、任期スタートから3か月が経過した。昨年7月、水害現場で海兵隊員が死亡した事故の捜査をめぐり、大統領室や国防部(部は省に相当)などが圧力をかけたのではないかとの疑惑が浮上し、野党「共に民主党」などは、この疑惑を政府から独立した特別検察官に捜査させるため、特別検事任命法(特検法)の強行処理に乗り出した。これに反発した与党「国民の力」と激しく衝突する事態となり、「国民の力」は開院式の欠席を宣言。開院式は、無期限に延期され、通常国会が開会した今月2日、「『通常国会の開会式』兼『第22代国会開院式』」という形でようやく開かれた。
開院式で、ウ・ウォンシク国会議長は「開院式が遅くなり、国民の皆さんに申し訳なく思う」とし、「議長として重い責任を感じる」と謝罪した。開院式は開かれたが、尹大統領は欠席。異例の事態に、ウ議長は「国会を尊重せずに国政運営の成果を出すことはできない」と述べ、暗に尹大統領を批判した。
一方、大統領秘書室のチョン・ジンソク室長は4日、大統領室の全職員を集めて行った朝礼で、「極端な少数与党で、野党が大統領をあざけり、暴言を吐いている」と野党を批判。「国会が理性を取り戻し、正常化するまでは大統領に国会に行くよう言えなかった」とし、尹大統領に対し、2日の開院式に出席しないよう、自身が申し入れたことを明らかにした。
しかし、「第6共和国」の発足後、初めて大統領が欠席した事態に、メディアは尹大統領の姿勢を批判している。韓国紙のハンギョレは3日付の社説で、「民意を代弁する国会を訪れ、開会を祝い協力を求めるどころか、冷ややかに無視する尹大統領の態度に、失望を禁じ得ない」と非難した。社説はさらに、尹大統領が先月29日に行った記者ブリーフィングで、年金、医療、教育、労働の4大改革を「大韓民国の生存と未来がかかった絶体絶命の課題」とし、「必ず成し遂げる」と述べたことを振り返った上で、「そのために必要不可欠な国会との協力には全く意志を示さなかった」と指摘。「尹大統領が『国会の正常化』を望むならば、先に与野党に手を差し伸べて『国政の正常化』に向けた最初のボタンをかけなければならない」と求めた。
また、東亜日報も「尹大統領の今回の開会式欠席は様々な意味で残念だ。いくら国会、野党の責任が大きいとはいえ、行政のトップとして国民の代表機関である国会を認め、最低限の礼儀は守らなければならない」と批判。その上で「歴代大統領は今に劣らず厳しい状況でも国会開会式に欠席することはなかった」と指摘した。
世論調査会社のリアルメーターが今月2日に、全国の18歳以上の2513人を対象に先月26~30日に実施した調査で、尹大統領の支持率は前週から0.4ポイント下がって29.6%だった。同社の調査でチュン大統領の支持率が30%を下回ったのは2022年8月の第4週(29.3%)以来、2年ぶりだ。
国民から「国会軽視」のイメージを持たれれば、さらなる支持率低下を招きかねない。
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