<W解説>ドイツ・ベルリンの公有地の慰安婦像、設置した韓国系団体による提訴で撤去先延ばしの可能性
<W解説>ドイツ・ベルリンの公有地の慰安婦像、設置した韓国系団体による提訴で撤去先延ばしの可能性
ドイツ・ベルリン市ミッテ区に韓国系の市民団体が設置した、慰安婦問題を象徴する少女像について、行政側が今月末までに撤去するよう命じたことを受け、市民団体は今月、命令差し止めの仮処分をベルリンの行政裁判所に申し立てた。訴訟中は、強制撤去は難しくなるとみられ、少女像の撤去が先延ばしになる可能性がある。

慰安婦問題を象徴する少女像をめぐっては、元慰安婦らを支援する韓国の市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)が2011年12月にソウルの日本大使館前に設置して以降、世界各国に広がった。

ミッテ区が撤去を命じている像は韓国系市民団体の「コリア協議会」によって2020年9月に設置された。同協議会がこの像を設置する以前にドイツ国内には既に2体あったが、いずれも設置場所は私有地だった。しかし、撤去命令が出ているこの像は初めて公共の場所に設置されたことから波紋を広げることとなった。

そのため、2020年10月、ミッテ区長は一旦、この像の撤去命令を出したが、コリア協議会側は反発。その後、結局、区長は撤去命令を撤回し、区は撤去期限を設けて期間中の設置を容認した。先月末、区は「認めた期限が切れた」として同協議会に私有地への移設を求めた。しかし、同協議会側は現在の公有地での設置を主張し拒否した。

先月24日、区議会では像を残すことを求める動議が賛成多数で採択されたが、法的拘束力はなく、区長は当初の方針通り、同協議会に対し、公有地の明け渡しを求めた。

この像について、日本政府はドイツ側に撤去を繰り返し要請してきた。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的解決」を確認した2015年の日韓合意では、国際社会での非難や批判は控えると約束しており、慰安婦問題を象徴する少女像の第三国での設置はこうした立場とも相いれないことから、ドイツの公有地のこの像を含め、日本政府は各国に設置された像の早期撤去を求めている。2022年4月に行われた日独首脳会談では、当時の岸田文雄首相がドイツのショルツ首相に撤去に向けて協力を依頼した。首相自らが要請したことは極めて異例のことだった。しかし、このまま像の設置を欧州の主要国であるドイツで許せば、誤った歴史が国際社会に根付くことになりかねないという日本政府の危機感が背景にあったものとみられている。しかし、像の管轄はミッテ区で、ドイツ政府として介入できる余地は少ないことから、ショルツ首相が当時示した反応は薄かったとされる。

だが、今年5月、ベルリン市長は当時の上川陽子外相と会談した際、「変化を起こすのが重要だ」と述べ、解決を図る方針を示した。これに、コリア協議会は撤去に向けた動きだとして「日本政府の圧力に屈した」と反発した。

ミッテ区の公有地に設置の像は、先月28日で期限が切れた。前述のように、コリア協議会は私有地への移転を拒否したため、区は先月30日、4週間以内に撤去するよう通告。応じない場合は過料を科す方針を示している。

協議会側の対応が注目される中、協議会は、区の撤去命令に対抗し、先週、ベルリンの行政裁判所に差し止め請求訴訟を起こしていたことが分かった。産経新聞によると、同協議会のハン・ジョンファ(韓静和)代表は21日、同紙の取材に「裁判は1~4か月はかかる。その間、強制撤去はできないはず」と語った。

同協議会はこれまで、像について「戦時下における女性への性暴力をテーマとしたもので、日本に特化したものではない」と主張している。しかし、像の台座には英語で「日本軍はアジア太平洋地域の無数の少女や女性を強制連行し、性奴隷にした」などと事実に反する記載があり、日本を貶(おとし)める意図があることがうかがえる。

また、韓国紙のハンギョレによると、同協議会は、日本政府が日韓合意を根拠に、像の撤去を求めていることについて「『韓日合意によって慰安婦問題は解決されており、少女像は韓日関係の問題だ』というのは、日本政府が取ってきた典型的な立場」と反論。「少女像は普遍的な問題を記憶し、追悼するという意味を持つため、(韓日合意は)少女像撤去の根拠にはなり得ない」と主張している。
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