今回の衆院選は、政治資金問題で自民党に逆風が吹き、開票の結果、同党は公示前の256議席から大幅に減らし191議席にとどまった。公明党も8議席減の24議席となり、15年ぶりに与党過半数割れとなった。一方、野党第一党の立憲民主党は148議席を獲得し、選挙前の98議席から大幅増となった。
石破首相は28日、党本部で記者会見し、「極めて厳しい審判をもらった。自公の有為な方を多く失ったことは痛恨の極みだ」と陳謝した。その上で、「国政は一時たりとも停滞が許されない」として続投する意向を示した。
与党大敗の結果を、韓国の各メディアも詳しく報じた。朝鮮日報は、今回の衆院選は「『自民派閥裏金問題』による審判的な性格の選挙」だったとした上で、「連立政権を組む両党が多数党の座から転落したのは2009年以来、15年ぶりのことだ」と伝えた。東亜日報は「裏金スキャンダルで腐敗の素顔が明らかになった上に、物価高が続いて実質賃金が減り、国民の不満が大きくなった」と解説した。
石破氏が首相に就任してすぐに行われた今回の衆院選だったが、韓国メディアは、先月27日に投開票された自民党総裁選も、事実上、日本の新しいリーダーが決まるだけに注目した。各社は石破氏が新総裁に決まるや速報。多くのメディアが石破氏について好意的に伝えた。当時、KBSは選挙結果を詳細に報じた上で、石破氏について「自民党内では右翼性向の議員とは異なる『ハト派』的な歴史認識を示してきた点が特徴的で、太平洋戦争のA級戦犯を合祀している靖国神社への参拝に対しても否定的な考えを示している」と紹介した。また、「韓日関係が悪化した時にも関係改善に積極的な意志を示してきた」とし、「このため、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領と岸田文雄(前)首相の間で大きく改善した韓日関係が、少なくとも両国間の歴史問題のために悪化することはないとの見方が出ている」と報じていた。また、東亜日報は石破氏について「保守強硬派だった安倍氏(安倍晋三元首相)と対立し、非主流派だった石破氏は、自民党の有力政治家の中で韓日関係に比較的前向きと評価されてきた」と紹介。今後の日韓関係のさらなる発展に期待を込めて伝えていた。
しかし、衆院選での自民党惨敗を受けて、韓国メディアは韓国との協力関係へのマイナスの影響を懸念している。KBSは「党内で退陣論すらも浮上していることから、石破総理は、今後、党内の保守派の反発を意識し、韓日関係における大胆な決断を下したり、大きな変化を推進したりすることが難しくなったのではないかとの見方が出ている」と報じた。文化日報は「石破首相のリーダーシップと政権の安定性が弱まる状況で、歴史問題をめぐる日本政府の前向きな措置は期待しにくい」と指摘した。MBCも「政局の混乱が続けば、日韓の懸案は後回しにされる可能性が高い」と懸念した。
一方、アジア経済は、右派の論客として知られる、作家の百田尚樹氏が代表を務める政治団体「日本保守党」の躍進を警戒した。同党は今回の衆院選で3人が当選したほか、比例選得票率が有効投票総数の2%以上となり、国政政党としての要件を満たした。アジア経済は「『嫌韓発言者』擁する保守党、初の国会進出」との見出しの記事を掲載。百田氏の過去の嫌韓的な発言を紹介した。韓国メディアは、かねてから日本の政治の右傾化を懸念しており、アジア経済は日本保守党の躍進により、「自民党の不振で、日本の右傾化が抑制されたとみるのは困難」と分析した。
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