「キムチの日」はキムチ文化の発展を願い、韓国農水産食品流通公社が2020年に制定した。11月22日としたのは「キムチは素材一つ一つ(11)が集まって、22種類(22)の効能を見せる」とされていることにちなむ。また、11月にキムチの材料である白菜が旬を迎え、この時期がキムチづくりに最も適しているからとの意味合いもある。
韓国農林畜産食品部(部は省に相当)はこの日、ソウル市内で記念式典を開催した。同部のソン・ミリョン長官は「キムチ産業はこのところ、国内外で著しい成長と変化を見せている」とした上で、「キムチ産業の持続可能な成長に向け、積極的にサポートし、キムチを通じた分かち合い精神や共同体文化を国内外に発信していく」と強調した。式典後は韓国人の男性と国際結婚した女性でつくる婦人会などが参加し、「キムジャン」を体験した。
韓国のソウルフードのキムチ。食卓に欠かせない野菜で、飲食店でも、メインの料理と共に決まって提供される。また、韓国の家庭では長く「キムジャン」の文化が根付いてきた。同公社のホームページでは、キムジャンの歴史を紹介している。それによると、1241年の書物「東国李相国集」には、大根を塩漬けにして冬に備えたという記述があるものの、17世紀頃まで、一大行事的な意味合いは薄かったとみられるという。18世紀中ごろになると、貴族の間で越冬用のキムチ漬けが始まり、この階層の人々が時季を同じくして漬けるようになったことでキムジャンに至ったと同公社は解説している。上流階級の間でキムジャンが定着すると、やがて庶民の間にも広がり、白菜キムチの普及からキムジャンが習慣化した。また、同公社は「粉唐辛子の使用により保存性が高まったこともキムジャンが浸透した理由」と説明している。20世紀には階層に関係なくキムジャンが広がり、韓国独自の文化として定着していった。2013年にキムジャン文化はユネスコの世界無形文化遺産に登録された。しかし、現在は都市化や核家族化が進み、親戚一同が集まってキムチをつくる機会は少なくなってきている。
韓国人のキムチ消費量自体も近年、減っているとされ、これは「キムチ宗主国」として文化継承の観点から由々しきことだ。一方、最近の韓流ブームや健康志向の影響から、国外でのキムチの消費は増している。今年1~10月のキムチの韓国の輸出額は1億3470万ドル(約208億4800万円)で、昨年同期比3.1%増加した。最大の輸出国は日本で、これに米国、オランダ、イギリス、オーストラリアと続いた。
今夏、韓国は記録的な猛暑に見舞われ、その影響により、白菜を含む野菜の価格が上昇している。白菜は18~20度での栽培が適するとされ、今夏の暑さは野菜の中でもとりわけ白菜に大きな影響を与えており、白菜の立ち枯れを起こす根腐れ病などの土壌伝染病も広がった。
毎年のように猛暑が続けば、将来、韓国産の白菜キムチが食べられなくなるかもしれないとの懸念も出ている。韓国農村振興庁の気候変動シナリオは、白菜の作付面積は今後も縮小が進み、2090年までには高冷地で栽培できなくなると予測している。地球温暖化に歯止めがかからない現状を踏まえると、今後、温暖な気候でも育つ品種改良なども必要となってくるだろう。
「キムチ宗主国」にとって頭が痛い話題が相次いでいるが、それに輪をかけて韓国人の怒りを買う事態も起きている。韓国の誠信女子大学のソ・ギョンドク教授は中国がキムチを自国の文化にしようと企てていると主張。「最近ネットユーザーから情報提供を受け確認したところ、中国のSNSに『キムチ』『中国』などのハッシュタグを付けて多くの映像が投稿されていた」とした上で、「中国のSNSだけでなくユーチューブショート、インスタグラムリール、Tik Tokなど様々なところに広がっており、深刻な状況だ」と懸念を示した。
中韓ではこれまで、キムチをめぐる起源論争が度々起こって来た。2020年には中国メディアが「キムチは中国の泡菜(パオツァイ)が基準」と報じて大論争になったこともある。
キムジャンの衰退、韓国人のキムチ消費量減、白菜の価格高騰、そしてキムチをめぐる中韓の論争。「キムチ宗主国」韓国は今、頭の痛い問題が山積している。
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