李氏は2019年2月、自身の公職選挙法違反の裁判で、自身に有利になるよう証人にうその証言をさせたとして、昨年10月、偽証教唆の罪で起訴された。25日の判決公判で、ソウル中央地裁は、検察側が提出した証拠だけでは李氏が「偽証を要求したとみるのは難しい」として、無罪を言い渡した。一方、李氏に依頼され、偽証罪で起訴された関係者には罰金500万ウォン(約55万1340円)が言い渡された。検察は李氏に下された判決は不服として控訴する方針を示している。
李氏は判決後、記者団の取材に応じ、「真実と正義を取り戻してくれた裁判所に感謝申し上げる」と述べた。その上で、四字熟語を引きながら「滄海一粟(そうかいのいちぞく、海原に浮かんだ一粒の粟のように微々たるものの意)のごとく、私が受けている困難は大きな海の中の粟一つに過ぎないのではないか。韓国国民が受けている困難や苦痛に比べたら、私が受けている困難は微々たるものという気がする。今後も韓国国民のより良い暮らしのために最善を尽くす」と述べた。また、政府、与党に対し「このように互いに殺し合うのではなく、互いに共存して共に歩む政治になってほしい。殺す政治より、人を生かす政治をしようと政府と与党に言いたい」と語った。
李氏は2022年の大統領選に立候補したが、現大統領のユン・ソギョル(尹錫悦)氏に僅差で敗れた。27年の大統領選でも野党有力候補と目されている。しかし、李氏は、ソウル郊外のソンナム(城南)市長だった当時に進めた都市開発に絡む汚職など、複数の罪で起訴されている。計5件の刑事裁判を抱えており、今月15日には、公職選挙法違反の罪で懲役1年執行猶予2年の有罪判決を受けた。李氏は都市開発に関連して、同市内の土地が不正に用途変更された疑惑をめぐり、前回大統領選の候補者だった21年、「国土交通部(部は省に相当)に脅迫されて実施した」と国会で主張した。地裁は今月15日の判決公判で、李氏のこの発言を虚偽と認定。「選挙の過程で有権者に虚偽の事実が公表されれば、有権者が正しい選択をすることができなくなり、民意が歪曲され、選挙制度の機能と代議制民主主義の本質が損なわれる恐れがあるという点で、罪責が軽いとは言えない」とし、有罪とした。
計5件の裁判の中で初めて無罪判決が言い渡された25日の公判後、「共に民主党」の最高委員らは懇談会を開催した。韓国紙のハンギョレによると、同党のチョ・スンレ首席報道官は懇談後、「そもそも話にならない、無理な起訴だった。大韓民国の憲政史で大統領選の候補(と目される人物)をこれほどひどく弾圧した政権はなかった。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は今からでも野党に対する弾圧捜査をやめ、政治を元に戻してほしい」と求めた。
一方、与党「国民の力」のハン・ドンフン(韓東勲)代表は同日、自身のSNSを通じてコメントを発表。「偽証した人だけが有罪で、偽証教唆した人は無罪という判断は納得し難い」とした一方、李氏が公職選挙法違反の罪に問われ今月15日の1審で有罪判決を受けたことに関連し、「11月15日の判決を尊重したように、今日の判決も尊重する。『共に民主党』には15日の有罪判決も尊重するよう願う」と投稿した。
前述のように、李氏は27年の大統領選でも野党有力候補と目される。15日の公職選挙法違反の罪に問われた裁判では有罪判決が言い渡され、李氏は控訴する方針だが、今後、判決が確定すれば次期大統領選に立候補できなくなる。だが25日の偽証教唆の罪に問われた裁判では無罪となったことから、韓国の聯合ニュースは「自らの司法リスクについての負担をある程度軽減させることができたといえる」と伝えた。
韓国紙のハンギョレは、25日の判決を受け、李氏が代表を務める「共に民主党」内の雰囲気について「(李氏に近い)親イ・ジェミョン派は、李氏の公判で戦列が乱れた対与党闘争の手綱を再び引き締めていくムードだ」と伝えた。尹政権は現在、尹氏の妻をめぐる疑惑などで「共に民主党」など野党から厳しい追及を受けている。ハンギョレは今後、同党が「守勢に追い込まれた大統領と政府与党をさらに強く追い詰める」との見方を示した一方、「党とは別に李代表としては『闘争一辺倒』から抜け出し、『民生(国民の暮らし)』改善」に重きを置く可能性が高い」と予想した。その理由について同紙は「早ければ来春にある公職選挙法の控訴審判決を控え、不要な『裁判所圧迫』批判にさらされる理由がないためだ」と解説した。
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