7~9月期の出生数の前年比増は、先月27日に統計庁が発表した「人口動向」で明らかになった。今年1~9月の出生数17万8600人で、前年同期(17万7315人)比0.7%増となった。韓国紙の朝鮮日報は「出生数は今年7月から3か月連続で増加傾向が続いており、それに伴い前年の同時期累計と比べた増減率は今年1~7月のマイナス1.2%から今年1~8月にはマイナス0.4%へと減少幅が縮まり、今年9月に入って増加に転じたものだ」と解説した。
韓国統計庁は今年2月、2023年の韓国の合計特殊出生率は「0.72」で、過去最低を更新したと発表した。韓国の出生率は1984年に1.74となり、初めて2を下回った。2000年代に入ると1.1~1.3を推移し、2018年には0.98と遂に1を割り込んだ。経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中で出生率が1を下回っているのは韓国だけだ。2018年以降も歯止めがかからず、2020年には0.84、2021年は0.81、2022年は0.78、そして昨年はさらに最低値を更新して0.72となった。
少子化がここまで進んだのは、結婚する人が減ってきたことが最大の要因とされる。超学歴社会、就職難の韓国において、激しい競争の末に格差は広がり、経済的不安から結婚や出産に踏み出せないケースも少なくない。韓国では2000年代半ばに恋愛、結婚、出産を諦める「3放」という言葉が生まれた。韓国には依然、子育ては母親が行うものという考えが残っており、結婚すれば子育てに家事と、負担を一挙に背負うことになるのではとの懸念から、結婚を躊躇(ちゅうちょ)する女性もいる。また、ライフスタイルが多様化し、結婚をしない選択をする女性もおり、それも一つの価値観として尊重すべき時代になっていることも事実だ。
韓国で少子化が大きな社会問題として浮上したのは2000年代はじめからだ。2003年に発足したノ・ムヒョン(盧武鉉)政権から少子化対策に本腰を上げて取り組むようになった。ユン・ソギョル(尹錫悦)現政権も、少子化対策として低家賃の公営住宅の建設や移民の受け入れなどを掲げ取り組んでいる。
尹氏は今年6月、「人口国家非常事態」を宣言した。急速に進む少子高齢化に対応するため、「人口戦略企画部(部は省に相当)」を新設する方針を示した。同部には、今後、少子・高齢化など人口構造に関する政策を統括するコントロールタワーとして、部署間の協力を促進し、調整する役割を果たすことが期待されている。与党「国民の力」は7月、設立に向け少子化・高齢社会基本法改正案などを党論として発議した。今月7日には、政府ソウル庁舎で第1回人口戦略企画部の設立準備に関する関係部署会議を開催。企画財政部、保健福祉部、教育部、人口政策に関係する約10の政府部署が出席した。少子化予算の事前審議など新制度の導入案や、同部の組織構成などについて議論した。
韓国で少子化対策が喫緊の課題となる中、前述のように今年7~9月に生まれた子供の数が大幅に増えた。朝鮮日報は「韓国統計庁では、このような傾向が続けば今年の合計特殊出生率は昨年(0.72)を上回り、0.74前後を記録するものとみている」と伝えた。
ハンギョレによると、韓国政府は増加の要因についてコロナ禍後の結婚の増加と社会認識の変化を挙げている。統計庁人口動向課のイム・ヨンイル課長は「2022年8月からの婚姻の増加の影響があり、30代前半の人口が少し増加したことによる出生率の上昇の影響も大きかった」とし、「最近の調査で『結婚したら子どもを持つべきだ』という回答の割合が高くなるなど、認識の変化もあると思われる」と説明しているという。9年ぶりの合計特殊出生率の反転上昇に期待が高まる中、イム課長は「(出生率には)経済的部分も影響するため、上昇が続くかどうかは見守らなければならない」とも述べた。
同紙によると、ソウル大学人口政策センターのイ・サンニム責任研究員は同紙の取材に「現在の(少子化)政策は当面は効果が上がるが、短期的な効果に終わる可能性も高い」とし、「若者に直ちに何かを与えるという政策よりも、(一貫性ある対策で)信頼される政策を展開すべきだ」と指摘した。
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