<W解説>韓国・尹大統領弾劾訴追案の可決の可能性は?賛成意向の与党議員続々
<W解説>韓国・尹大統領弾劾訴追案の可決の可能性は?賛成意向の与党議員続々
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領に対する2度目の弾劾訴追案の採決が、14日にも行われる見通しとなっている。7日の採決では与党議員のほとんどは国会の本会議場を退席し、投票を拒んだため定足数不足で採決が成立せず、弾劾案は自動的に廃案となった。2度目の弾劾訴追案の採決を前に、「国民の力」のハン・ドンフン(韓東勲)代表は「弾劾で職務停止することが民主主義を守る唯一の方法だ」として党所属議員に弾劾案に賛成するよう呼び掛けた。同案が可決されるためには与党から少なくとも8人が賛成する必要がある。韓氏の呼びかけを受け、同党から賛成票を投じる意思を示す議員が出てきている。一方、尹氏は12日、国民向けの談話を発表。戒厳令宣布は「民主主義を守るための合法的な措置だった」と正当性を主張した上で、「私を弾劾しようが、捜査しようが、これに堂々と立ち向かう」と述べた。

事の発端は尹氏が今月3日深夜、非常戒厳令を宣布したことにさかのぼる。尹氏は発表した緊急談話で「『共に民主党(最大野党)』の立法独裁は、大韓民国の憲政秩序を踏みにじり、内乱をたくらむ自明な反国家行為だ」とした上で、「反国家勢力」を撲滅するとして、非常戒厳令を宣布した。

戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。尹氏が発令した「非常戒厳令」は韓国憲法が定める戒厳令の一種で、戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するもの。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。

発令後、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。国会上空には軍のものとみられるヘリコプターも飛んだ。軍事政権時代を連想させる事態に、発令後、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席した190人の議員全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

「共に民主党」など野党6党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、今月4日、尹氏の弾劾案を国会に提出した。

7日、国会で採決が行われた。弾劾案の可決には国会の在籍議員300人のうち、3分の2の賛成が必要となる。野党、無所属の計192人に加え、与党「国民の力」から8人以上の造反者が出るかどうかが焦点だったが、同党議員は尹氏が採決を前に発表した談話で戒厳令宣布を謝罪し、任期途中での辞任を示唆したことから、訴追案への反対で結束。与党議員のほとんどが本会議場を退席し、投票を拒んだため、採決は定足数不足で不成立に終わった。

これを受け与党側は、同案が可決するまで毎週土曜日に弾劾訴追案の採決を続ける方針を表明。2回目の提出となる弾劾訴追案の採決が14日に行われる見通しとなっている。

採決を前に「国民の力」の韓代表は12日、記者会見し、「党として弾劾に賛成すべきだ」と主張した。同党はこれまで、弾劾を避けるための収拾策として、来年2~3月に尹氏が退陣し、4~5月に大統領選を行う案を軸に調整を進めてきたが、尹氏はこれに応じなかったという。韓氏は「大統領が早期の退陣に応じる考えがないことを確認した」とし、「大統領は軍統帥権をはじめとする国政運営から直ちに排除されなければならない」と述べた。

韓氏の呼びかけを受け、「国民の力」からは14日の採決では賛成票を投じる意思を示す議員が出てきており、ニュース専門チャンネルYTNによると、その数は少なくとも7人となり、可決に必要な数にあと1人と迫った。

一方、尹氏は12日、国民向けの談話を発表し、「法的、政治的責任問題を回避しないと既に申し上げている」とした一方、「これまで国政マヒと国憲を乱す行為を主導した勢力と犯罪者集団が国政を掌握し、大韓民国の未来を脅かすことだけは何があっても防ぐべきだ」とし、「最後まで闘う」と強調した。国会で同案が可決されば憲法裁判所が最長180日をかけて、弾劾の妥当性を審理することになる。裁判官9人のうち6人以上が弾劾を支持すれば大統領は罷免される。
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