<W解説>遅延戦術?捜査機関の出頭要請も憲法裁からの書類受領も拒否の韓国・尹大統領
<W解説>遅延戦術?捜査機関の出頭要請も憲法裁からの書類受領も拒否の韓国・尹大統領
韓国国会で弾劾訴追案が可決し、職務停止となっているユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が、捜査機関からの出頭要請や、憲法裁判所から送られた弾劾審判書類の受け取りを拒否するなど、非協力的な姿勢を取り続けている。今月3日に「非常戒厳」を宣言した尹氏には内乱の疑いが指摘されており、検察は21日までに出頭を求める要請書を尹氏側に送付した。尹氏がこのまま応じない場合、捜査当局は逮捕状を請求することも検討しているとみられる。また、韓国国会が今月14日、尹氏に対する弾劾訴追案を可決したことを受け、今後、憲法裁判所が尹氏の弾劾訴追を審理するが、尹氏が裁判所から送達された書類の受領を拒否しているため、今後の審理の進行に影響することも懸念されている。国内では尹氏が遅延戦術を図っているとして批判が上がっている。

尹氏は3日深夜、非常戒厳を宣言。これを受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入した。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席した190人の議員全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。14日に採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これにより、尹氏の大統領としての権限は停止した。現在、大統領職はハン・ドクス首相が代行している。今後、憲法裁判所が尹氏を罷免すべきかを判断し、罷免になると、60日以内に大統領選が行われる。

弾劾訴追案の可決を受け、尹氏は直後に談話を発表。「しばらくは立ち止まるが、過去2年半、国民と共に歩んできた未来への旅は立ち止まってはいけない」とし、「私は決してあきらめない」と職務復帰への意欲をのぞかせた。

一方、韓国の野党は、一時「非常戒厳」を宣布した尹氏を内乱罪で告発。警察、検察は捜査を進めている。韓国の刑法87条は、国家権力を排除したり、国憲を乱したりする目的で暴動を起こした場合は内乱罪で処罰すると規定する。最高刑は死刑。韓国の憲法84条は「大統領は、内乱または外患の罪を起こした場合を除き、在職中に刑事上の訴追を受けない」と規定しており、現職大統領には不逮捕特権があるものの、内乱罪は例外のため、尹氏を逮捕・起訴することは可能だ。

弾劾と内乱罪に問われるリスクに直面している尹氏だが、これまで、捜査や憲法裁判所による弾劾審判手続きに非協力的な姿勢を続けている。韓国メディアは出頭要請を拒否する状況が続けば、拘束や逮捕に進む可能性が高いと伝えている。

一方、憲法裁判所は19日、裁判官全員が出席して評議会を開いた。この評議会は、憲法裁判官全員が毎週、事件について議論する定期的な会議で、公共放送KBSは「(尹氏に対する)弾劾訴追議決書や関連証拠資料の送達状況について協議が行われたとみられる」と伝えた。尹氏はこれら書類の受領を拒否した状態で、憲法裁判所は今後、当事者が書類の受領を拒否しても送達されたとみなす「送達みなし」や、発送時点で送達されたとみなす「発送送達」の適用を検討するもようだ。

一方、尹氏は弾劾審判、内乱罪の捜査のそれぞれに対応する2チームの弁護団を構成中だ。結成にかかわるソク・ドンヒョン弁護士は19日、海外メディアの取材に応じ、尹氏には今後、必要となれば憲法裁の弾劾審判に出廷する意向があると明らかにした。また、「尹大統領は堂々とした立場」とし、3日に非常戒厳を宣言したことは、「内乱に該当しない」と主張した。尹氏が出頭要請を拒否していることが批判されているが、尹氏側は書面調査や捜査員が訪問しての聴取など、出頭しない形での捜査協力を選択肢に含めながら検討しているとみられ、ソク氏は「(時期が来れば)大統領はすべきことをすると思う」と話した。
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