与正氏は、父の故キム・ジョンイル(金正日)氏と大阪出身の元在日朝鮮人のコ・ヨンヒ(高勇姫)氏との間に1988年9月26日に生まれたとされ、現在、推定36歳。長男のジョンチョル(正哲)氏、次男の正恩総書記の兄2人を持つ3人兄弟の末っ子だ。これまで、金総書記の視察に度々同行するなどし、国営メディアでもその姿が捉えられてきた。朝鮮労働党中央委員会の宣伝部第1副部長、同政治局員候補などを歴任し、現在、党副部長を務めている。
与正氏は近年、韓国に対し、強硬な姿勢を取っており、とりわけ、韓国に住む脱北者団体が北朝鮮に向けて体制批判のビラを散布していることに強く反発している。北朝鮮は昨年、ビラ散布に反発し、韓国に向ける汚物などをぶら下げた風船を飛ばした。当時、与正氏は韓国に対し韓国が体制批判のビラ配布や宣伝放送を続けた場合、「紙(風船にくくり付けられたゴミ)を拾い集めなければならない困惑が韓国の日常になるだろう。これ以上、対決の危機を招く危険な行為を直ちに中止し、自粛することを厳重に警告する」とした。
また、北朝鮮は昨年10月、韓国の無人機(ドローン)が、北朝鮮の首都・ピョンヤン(平壌)上空に侵入したと主張。与正氏は談話で「我々は平壌への無人機事件の主犯が大韓民国軍部のクズどもであることを明確に知っている」とし、「核保有国の主権が、米国人が手なずけた雑種犬によって侵害されたとすれば、それらを育てた飼い主が責任を取らなければならない」とし、米韓両国を非難した。
また、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、北朝鮮は軍部隊をロシアに派遣したが、与正氏は昨年10月、このことが国際社会で問題視されていることに反発。「(韓国とウクライナが)呆れた妄言を吐いている」と批判した。
その与正氏は、今月1日に北朝鮮の朝鮮中央テレビが放送した新年祝賀公演の録画映像で、男女2人の子どもと手をつないで会場入りする様子が捉えられた。与正氏は2015年ごろ、結婚指輪をしている姿が確認され、当時、結婚しているとの見方が広がった。また、韓国の国家情報院は同年5月、与正氏が出産した可能性を国会情報委員会に報告した。さらに18年には、与正氏が韓国で開催されたピョンチャン(平昌)冬季五輪に合わせ訪韓した際、腹部がふっくらしていると指摘された。
今回の映像を受け、韓国の国家情報院は、映像で捉えられた2人が与正氏の実の子である可能性を念頭に詳しい分析を進めていることを明らかにした。また、韓国の通信社、聯合ニュースによると、韓国統一部の当局者は2日、与正氏が子どもの手をひいている姿が放送されるのは異例であり、祝賀公演は家族を伴う行事だったことから、一層注視していると話した。
今回、映像に捉えられた2人の子どもが与正氏の実子だった場合、「白頭血統」の中で、今後、2人も一定の役割を担っていく可能性がある。
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