韓国の出生率は1984年に1.74となり、初めて2を下回った。2000年代に入ると1.1~1.3を推移し、2018年には0.98と遂に1を割り込んだ。経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中で出生率が1を下回っているのは韓国だけだ。2018年以降も歯止めがかからず、2020年には0.84、2021年は0.81、2022年は0.78、そして2023年はさらに最低値を更新して0.72となった。
少子化がここまで進んだのは、結婚する人が減ってきたことが最大の要因とされる。超学歴社会、就職難の韓国において、激しい競争の末に格差は広がり、経済的不安から結婚や出産に踏み出せないケースも少なくない。韓国では2000年代はじめに恋愛、結婚、出産を諦める「3放」という言葉が生まれた。韓国には依然、子育ては母親が行うものという考えが残っており、結婚すれば子育てに家事と、負担を一挙に背負うことになるのではとの懸念から、結婚を躊躇(ちゅうちょ)する女性もいるとされる。また、ライフスタイルが多様化し、結婚をしない選択をする女性もおり、それも一つの価値観として尊重すべき時代になっていることも事実だ。
韓国で少子化が大きな社会問題として浮上したのは2000年代はじめからだ。2003年に発足したノ・ムヒョン(盧武鉉)政権から少子化対策に本腰を上げて取り組むようになった。2022年にユン・ソギョル(尹錫悦)政権になってからも、力を入れて取り組んできた。昨年6月、韓国政府は尹氏が主宰する「低出産高齢社会委員会」を開催。「人口国家緊急事態」を宣言した。また、昨年9月、韓国国会は、子育て支援3法(男女雇用平等及び仕事・家庭両立支援に関する法律、雇用保険法、勤労基準法の改正法案)を可決した。少子化の傾向を反転させるため、育児休業期間の延長、配偶者の出産休暇の拡大など、仕事と家庭の両立支援策を推進するため、制度的基盤の整備を図った。
こうした中、韓国行政安全部(部は省に相当)が今月3日に発表した2024年の住民登録に基づく人口統計で、昨年の出生数が9年ぶりに増加したことがわかった。韓国の通信社・聯合ニュースは「急速に少子高齢化が進んでいた韓国の人口構成が変化する兆しを示したとの見方が出ている」と伝えた。
朝鮮日報によると、ハンリム大学社会福祉学部のソク・ジェウン教授は、同紙の取材に「政府や地方自治体などが少子化対策を打ち出した効果が出ている。『子どもを産んだら損』という認識も少しずつ変わってきている」と指摘した。昨年、ソウル近郊のインチョン(仁川)市が市内で生まれた子どもを対象に、18歳まで合計で「1億ウォン(約1060万円)」を支給する思い切った子育て支援策を打ち出し話題となったが、自治体や企業は相次いで出産インセンティブ政策を打ち出している。仁川市では新婚夫婦の転入者が増えているという。
また、アジア諸国では、結婚と出産の間に高い相関関係があり、昨年、婚姻件数が増加したことも出生数の増につながったとの見方が出ている。2022年に19万1690組だった韓国の婚姻数は、2023年に19万3657組と2000組近く増えた。婚姻数が増加に転じたのは2011年以来、12年ぶりのことだった。結婚に対する肯定的な認識が広がっていることが背景にあり、統計庁が昨年行った調査によると、「結婚しなければならない」と考える国民の割合は52.5%で、この8年で最高を記録した。
一方、朝鮮日報によると、ハニャン(漢陽)大学高齢社会研究院のイ・サムシク院長は、「深刻な少子化傾向が完全に解消されたとみなすのは難しい」とし、「新型コロナウイルス感染症の流行で結婚・出産を先送りしていたカップルが子どもを産むようになり、一時的に出生数が増加したとみるべきだ」と指摘した。
聯合ニュースによると、行政安全部のキム・ミンジェ次官補は「出生数増加の傾向が続くよう関係官庁が連携し、育児環境を改善し、多角的な支援策を用意する必要がある」と話した。
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