<W解説>韓国大統領選、有権者の関心高く、期日前投票は過去最高の見通し=一方、初日にトラブルも
<W解説>韓国大統領選、有権者の関心高く、期日前投票は過去最高の見通し=一方、初日にトラブルも
来月3日に投開票の韓国大統領選挙は、29日に期日前投票が始まり、本日30日まで行われる。今回の選挙は、昨年の12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が罷免されたことに伴い実施される。韓国紙の東亜日報は29日付の社説で、期日前投票の始まったことに触れながら「韓国の民主主義の回復を世界に示す機会だ」と主張した。一方、期日前投票の初日の29日、ソウル市内の投票所で、投票用紙の一部が外部に持ち出されたことがわかり、ずさんな管理体制に、韓国の選挙制度の根幹が崩壊したとの批判の声も上がっている。韓国では、前回の大統領選でも、新型コロナウイルスの感染者らの投票済み用紙がずさんに扱われ、問題となった。

選挙戦はここまで、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)候補がリードし、与党「国民の力」のキム・ムンス候補、野党「改革新党」のイ・ジュンソク(李俊錫)候補が追う展開となっている。

29日には、期日前投票が始まった。全国3568か所に投票所が設けられ、有権者は、身分証明書を持参すれば、全国どこの投票所でも投票できる。期日前投票の開始を報じた韓国紙の東亜日報は、「(前回の)第20代大統領選挙では、全有権者の半数近くが期日前投票に参加したことからも、事実上、次期大統領の有権者の選択が始まったことになる」と伝えた。

主要候補者たちもそれぞれ投票した。李在明候補はソウル市シンチョン(新村)の学生街に設けられた投票所を訪れた。李氏は投票後、「韓国は再び若者の時代に戻らなければならない。今回の選挙がその出発点になればと願い、若者たちと共に投票した」と語った。また、今回の大統領選は尹前大統領の「非常戒厳」宣言に端を発した「内乱の審判」の意味合いもあることから、李氏は「銃より投票が強いという言葉がある。今回の内乱にも、国民の皆さんの投票参加があってこそ勝つことができる」と話し、投票を呼びかけた。

「国民の力」のキム・ムンス候補は、首都圏のインチョン(仁川)市で娘とともに投票を行った。訪れた投票所は、李在明氏が国会議員に当選した選挙区にあり、通信社の聯合ニュースは「李氏が支持率でトップを独走する中、逆転を狙う意思を示したものとみられる」と伝えた。キム氏は投票前、朝鮮戦争で仁川上陸作戦を指揮したマッカーサー将軍の銅像に立ち寄った。「仁川大作戦のように選挙戦をひっくり返す」と語り、自身の支持が広がっているとして、投票を呼び掛けた。

「改革新党」の李俊錫候補は、自身の選挙区であるソウル近郊のキョンギド(京畿道)ファソン(華城)市で投票した。李氏は「華城市トンタン(東灘)は、前回の総選挙で政治変化への熱意を最も大きく示した選挙区だった。今回も政治交代、世代交代、時代交代を実現したい」と語った。

中央選挙管理委員会によると、期日前投票初日の投票率は19.58%で過去最高を記録した。聯合ニュースは「このペースなら30日まで実施される期日前投票の最終投票率は、過去最高だった前回大統領選の36.93%を上回る見通しだ」と伝えた。

今回の大統領選は、昨年の12月に「非常戒厳」を宣言した尹前大統領が罷免されたことに伴い実施されるが、韓国紙の東亜日報は、29日付の社説で、今回選挙について「棄損された民主主義の価値と制度を一つずつ回復していく過程の一つだ」と指摘。「期日前投票など、選挙手続きの正常稼働も、妄想に陥った指導者が崩した民主主義の手続きの正当性を再び立て直すプロセスだ」とし、「今回の大統領選挙は、新しい大統領を選ぶことに留まらず、不信と疑惑の対象となった制度の安定的な運営を、さらには、この半年間の混乱と価値の低下を立て直す重要な機会となるだろう」とした。

こうした中、29日、ソウル市内の投票所で投票用紙が外部に多数持ち出されたことがわかった。投票するために列に並んでいた有権者の一部が、投票用紙を受け取ったまま、食事に出かけるなどしていたという。韓国メディアは、食事から戻って投票した有権者に再度の身分確認がないまま投票が行われた疑いがあると伝えた。中央選挙管理委員会は「今後、同様の事例が発生しないよう、再発防止に努める」と謝罪した一方、中央日報によると、選管の関係者は取材に「投票用紙を投票所の外に持って出て行ってはいけないという明確な法規定はない」と説明した。

だが、与党「国民の力」などからは批判が出ており、同党のパク・ソンフン中央選挙対策委員会報道官は「事前投票初日から明らかになったずさんな選挙管理だ」とした上で、「選管自らが投票の盛り上がりに水を差してはならない。本投票日まで一つの論争も起こさぬよう、組織の命運をかけて完璧な選挙管理を行うべきだ」と求めた。
Copyright(C) wowneta.jp