「共に民主党」の公認候補の李氏は選挙戦終盤、与党「共に民主党」のキム・ムンス候補との差がやや縮まったとする世論調査の結果も出たが、ここまで優位に選挙戦を戦ってきた。投開票日6日前から世論調査の公表が禁止されているが、情勢に大きな変化はないとみられている。
次期韓国大統領に最も近い人物が、どのような外交政策を進めようとしているのか、周辺国が注視する中、李氏は先月26日、SNSで外交・安全保障の公約を発表した。李氏は「堅固な韓米同盟を土台に、国益中心の実用外交を展開する」と表明した。対米関係を重視する姿勢は、早くも李氏周辺の動きに表れている。先月8日(現地時間)には、李氏の外交・安全保障・通商分野の参謀のキム・ヒョンジョン元国家安保室第2次長が、李氏の外交安保補佐官として米ワシントンを訪れ、トランプ米政権の当局者らと会合を開いた。大統領選候補の参謀が米政府の関係者と接触するのは異例のことだ。キム氏はホワイトハウス訪問を終えた後、記者団の取材に応じ、「韓米同盟は非常に重要であり、できるだけ強化・アップグレードしなければならず、韓米日の協力関係も強化する必要があるというのが李氏の立場であることを強調した」と説明した。
また、李氏は、公約で対日政策について、日本を「重要な協力パートナー」と位置付けた上で、「歴史・領土問題は原則的に、社会・文化・経済分野では、前向きかつ未来志向的に対応し、一貫して堅固な韓日関係の土台を固める」とした。
李氏といえば、これまで反日的な行動や発言が目立つ人物として知られた。ソウル近郊のソンナム(城城)市長を務めていた2016年には、前年に日韓で交わした慰安婦問題に関する合意に抗議するため、ソウルの日本大使館前で座り込み運動に参加した。ソウル近郊のキョンンギド(京畿道)知事在任中には、「親日残滓(ざんし)清算プロジェクト」を推進。京畿道内の教育現場における親日・日帝残滓の清算を行った。2022年の前回大統領選に出馬した際には日本に対し、強硬的な発言を繰り返した。ユン・ソギョル(尹錫悦)前政権が発足すると、政権を「親日売国政権」とレッテルを貼り、批判を続けた。一昨年8月、日本政府が福島第一原発の処理水の海洋放出に踏み切るや、「汚染水テロ」「第2の太平洋戦争」だとして反日を扇動。自らは抗議のためハンガーストライキを行った。
しかし、最近は李氏からは、かつてのような「対日強硬的」な発言はみられない。先月20日にSNSに投稿した動画では、「私は本当に日本と仲良くしたい」と述べ、文化交流や経済などの分野で協力を進めたい考えを示した。また、「私が日本に対して敵対的だろうという先入観がある」と指摘した上で、韓国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島)などに触れ「歴史問題や独島問題は強硬にならざるを得ないが、文化交流や韓日で協力できる分野では私は積極的で開放的だ」と述べた。その上で、「私は日本の国民に対してとても好感を持っている。日本には旅行で何度か行ったが、本当に謙虚で優しく、一生懸命で質素で学ぶことが多い国民だ」とも語った。
李氏は外交・安全保障などに関する公約を発表した先月26日、遊説先のスウォン(水原)市で、植民地支配への反省とおわびや、未来志向の関係発展を記した1998年の日韓共同宣言について触れ、望ましく現実的な原則だとの認識を示した。
一方、領土問題や歴史問題は「原則的に対応する」と語った。しかし、歴史問題のうち、日韓最大の懸案であった元徴用工問題は、尹前政権が解決策を示し、これを機に両国の関係は劇的に改善した。元徴用工問題の解決策は現在も進行中だが、李氏が大統領になった場合、前政権が示した解決策が引き続きそのまま履行されるかは見通せない。
また、慰安婦問題をめぐっては。前政権でも目立った動きはなかったが、2015年に日韓両政府は「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。安倍晋三首相(当時)が「おわびと反省」を表明し、日本政府は韓国の被害者支援の基金に10億円を拠出している。日本政府としてはこの問題は解決済みとの認識だが、4月25日には、元慰安婦の遺族が日本政府に損害賠償を求めていた裁判で、中部のチョンジュ(清州)地裁が日本政府に賠償を命じる判決を言い渡した。同様の裁判で日本に賠償を命じる判決が出たのは3件目。岩屋毅外相は、判決当時、談話を発表し、「国際法や日韓両政府間の合意に明らかに反する。極めて遺憾で断じて受け入れられない」と主張した。判決は先月15日までに確定した。元慰安婦を支援する韓国の市民団体は、選挙後に発足する新政権に対し、慰安婦問題の解決に積極的に取り組むよう訴えている。
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