<W解説>韓国の新大統領に李在明氏=大統領選で有権者の選択は政権交代
<W解説>韓国の新大統領に李在明氏=大統領選で有権者の選択は政権交代
韓国の大統領選は3日、投開票され、革新系最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏(60)が勝利した。選挙結果が確定し、李氏は第21代大統領に就任した。3年ぶりに革新政権に交代した。今回の大統領選は、昨年12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領の罷免に伴い実施された。勝利を確実にし、支持者を前に演説した李氏は、このことを念頭に「皆さんが私に託した第一の使命である内乱を克服し、銃剣で国民を脅かす軍事クーデターが二度と起こらないようにする」と述べた。任期は2030年までの5年間。

今回の大統領選には李氏のほか、保守系与党「国民の力」のキム・ムンス候補、保守系野党「改革新党」のイ・ジュンソク(李俊錫)候補らが立候補していた。「非常戒厳」を宣言した尹政権への評価が最大の争点となった。李氏は「非常戒厳」を宣言した尹前大統領を擁護した与党「国民の力」を「内乱勢力」と位置づけ、選挙期間中、「憲法秩序を崩壊しようとした内乱勢力を審判する選挙だ」と強調。「国民に銃口を向ける軍事クーデターが繰り返されない国をつくる」と訴えた。また、公約には民生の回復や、AI(人工知能)関連産業の育成、若者向けの雇用支援などを掲げた。

各世論調査の候補者の支持率で李氏は終始リードを保ち、優位に選挙戦を進めた。保守系は李氏に対抗するため、「国民の力」のキム候補と「改革新党」の李俊錫候補との一本化を模索したが、不発に終わった。

開票の末、李在明氏の当選が確定し、李氏は第21代大統領に就任した。韓国で革新系の政権が誕生するのは2022年以来、3年ぶり。李氏は支持者を前に「国民の偉大な決定に敬意を表す。私に与えられた大きな責任や使命、期待を裏切らないように最善を尽くす」と述べた。一方、李氏の当選が確実となると、キム候補は「国民の選択を謙虚に受け止める」と敗北宣言した。

李氏は南東部キョンサンプクド(慶尚北道)アンドン(安東)郡(現・安東市)出身。貧しい家庭に育ち、小学校卒業後は少年工として働きながら検定考試に合格、中学・高校の卒業資格を得た。1986年に韓国の中央大学を卒業し、弁護士となった。その後、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)ソンナム(城南)市長を2007年7月~2018年3月まで務めた後、2018年7月~2021年10月まで京畿道知事を務めた。前回、2022年の大統領選では、最後まで尹前大統領と激しい争いを見せたが、約24万票の僅差で敗れた。その後は「共に民主党」代表として尹政権批判の急先鋒に立った。日本に対しては、長く強硬的な言動を続けてきた。日本との友好路線を築いた尹政権の姿勢も「屈辱外交」と批判を繰り返した。しかし、最近になって「対日強硬的」な発言を封印。先月20日にSNSに投稿した動画では、日韓関係に言及し、「私は本当に日本と仲良くしたい」と述べ、文化交流や経済などの分野で日本と協力を進めたい考えを示した。

今回の大統領選について、韓国の通信社、聯合ニュースは「韓国大統領選で、有権者は尹錫悦前大統領の『非常戒厳』宣言後続いた混乱の責任を問うた」とし、「3年前の2022年に実施された大統領選で革新系のムン・ジェイン(文在寅)政権を審判して保守系の尹政権を発足させたが、非常戒厳に対する免罪符は与えなかった」と指摘。「選挙は革新系最大野党『共に民主党』の李在明氏の勝利で幕を下ろしたが、8年で2度の政権交代を決めた民意は厳しかった」と総括した。国外メディアも結果を速報した。共同通信は「昨年12月の尹氏の『非常戒厳』宣言に対する国民の反発が追い風となった」とし、「李氏は日韓関係に意欲を示すが、支持基盤は日本に厳しい立場で、両国関係の行方は見通せない」と今後を不安視した。米国のブルームバーグは「李氏は手堅い勝利を収めたように見えるが、(共に民主党が)恐らく望んでいたような圧勝とはいかず、同氏に対する根強い反対は一定の勢力を保ちそうだ」と指摘。その上で、「ただ、自身の政党が議会の過半数余りを占めているため、尹前大統領よりも政策を前進できる余地が大きい」と予想した。

通常であれば、新大統領は約2カ月間の引継ぎ期間を経て就任するが、今回は任期満了に伴う大統領選ではないため、李氏は、選挙結果の確定を受け、早くも任期をスタートさせた。就任式が本日4日に国会で行われる。
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