今回の大統領選は、昨年12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が罷免されたことに伴い実施された。選挙期間中、李在明氏は「非常戒厳」を宣言した尹前大統領を擁護した「国民の力」を「内乱勢力」と位置づけ、「憲法秩序を崩壊しようとした内乱勢力を審判する選挙だ」と強調。「国民に銃口を向ける軍事クーデターが繰り返されない国をつくる」と訴えた。一方、キム氏は、各世論調査で支持率トップを終始維持してきた李在明氏を念頭に、「怪物総統の独裁を防ぎ、自由民主主義と法治主義、市場経済、韓米同盟を守ることができる最後の機会」と訴え、自身への投票を呼び掛けた。「中道保守」を標榜した李俊錫氏は、キム氏側から保守候補一本化の提案を受けたが拒否。主要3候補の一人として最後まで選挙戦を戦った。
投開票の結果、李在明氏が当選を果たし、4日、第21代大統領に就任した。李在明氏は韓国大統領選における過去最多票を獲得して圧勝したが、過半数の得票には達しなかった。最終開票の結果、得票率は李在明氏が49.42%、キム氏が41.15%、李俊錫氏が8.34%だった。李在明氏と次点のキム氏の得票率の差は8.27ポイント(289万1874票)だったが、共に保守系のキム氏と李俊錫氏の得票率を合わせると49.49%となり、李在明氏の得票率を0.07ポイント上回る結果となった。保革が伯仲していたことが改めて確認されたといえる。
尹前大統領による「非常戒厳」の宣言以降、韓国社会は分断が進んだ。朝鮮日報は「政界では、国民統合なしには国政運営も容易ではないだろうとの見通しが出ている」と伝えた。同紙によると、「国民の力」のキム・ジョンイン元非常対策委員長は、公共放送KBSのラジオ番組に出演し、「李在明大統領は、冷静に判断する必要がある。結果的に言えば、過半数が李在明大統領を支持していないということだ。これからはそういう人々をどのように受け入れるかが最重要課題だ」と語った。李在明大統領は4日、国民へのメッセージで国民の統合を誓い、「小さな違いを越え、互いに認めて尊重し、国民が主人の国、国民が幸福な国、真の大韓民国に向かって共に進もう」と呼び掛けた。
また、李在明氏は、尹前大統領の弾劾や罷免を経て激化した対立の政治から、「協治(協力の政治))への転換を図ろうとしており、4日には、与野党の代表らと昼食会を開き、政治力の結集を呼び掛けた。昼食会で李氏は「政治が国民の困難を解消し、国民を一つにまとめる本来の役割を果たさなければならない」とした上で、「譲歩するところは譲歩し、妥協するところは妥協し、なるべく皆が同意する政策で国民がより良く暮らせるようになることを心から願う。敵対と戦争のような政治ではなく、互いに対話して認め合い、実質的に競争する政治になることを希望する」と述べた。さらに、李在明氏は自身と、選挙を戦った「国民の力」のキム氏に共通する公約から推進することを提案した。これについて韓国メディアのイーデイリーは、「協治の歩みを始めるためと解釈される」と解説した。
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