北朝鮮の最高人民会議は国の予算や法律の改正、国家機関の人事などを決定するため、年に1、2回開かれている。韓国の通信社、聯合ニュースが朝鮮中央通信の報道として伝えたところによると、北朝鮮の最高人民会議常任委員会は19日に総会を開き、来月20日の最高人民会議で▼糧穀管理法▼知的所有権法の審議採択▼都市経営法の執行検閲監督の定型に関する問題を討議することを決定した。聯合は「社会主義憲法の改憲ついての言及はなかったが、改憲問題が取り上げられる可能性がある」と伝えた。
韓国の尹前政権下で南北関係は冷え込み、金総書記は、昨年1月の最高人民会議での演説で、韓国について「第1の敵対国、不変の主敵」と憲法に明記する必要性を強調。「80年間の北南(北朝鮮と韓国)関係史に終止符を打つ」と宣言した。金総書記は「軍事境界線付近にある、南北をつなぐ全てのものを徹底して断ち切る」とも表明し、その後、北朝鮮軍の兵士らが昨年4月ごろから軍事境界線近くで地雷埋設作業に着手。当時、韓国では、南北の間に見える形で「国境」をつくるための措置との見方が広がった。しかし、金総書記が必要性を訴えた憲法改正の作業は、現在も完了していないとみられている。
一方、韓国では今年6月、イ・ジェミョン(李在明)政権が発足。李氏は北朝鮮との敵対行為を中止し、対話と協力を再開したい考えを示した。李氏は就任間もなく、前政権で続けられてきた、南北軍事境界線付近での対北宣伝放送の中止を指示した。放送は大スピーカーを使って行われ、内容は、韓国の民主主義制度が北朝鮮の政治制度よりも優れていることへのアピールや、北朝鮮の体制批判、韓国や海外のニュース、韓国の歌などだった。放送は北朝鮮軍の兵士に与える心理的影響が大きいとされた。放送中止の後続措置として、韓国軍は今月、スピーカーそのものを撤去した。
李政権としては、「融和姿勢」を示しながら北朝鮮との対話再開につなげたい考えだが、北朝鮮側の反応は芳しくない。金与正氏は先月、談話を発表。「韓国が、いくつかの感傷的な言葉で自らの行為の結果全てを帳消しにできると期待しているのなら、これほど大きな誤算はない」とした上で、「ソウルでどのような政策が採用され、そのような提案がなされようとも、我々はそれに関心がなく、韓国との対話を模索する理由も、議論すべき問題も存在しないという公式の立場を改めて明確にする」と強調し、韓国との対話を拒否する姿勢を示した。宣伝放送中止の措置についても「やるべきではなかったことを元に戻したに過ぎない。評価されるようなことにはならない」と切り捨てた。与正氏は今月14日にも談話を発表した。韓国政府は、韓国側がスピーカーを撤去した後に、北朝鮮も韓国向けの「騒音放送」に使っていたスピーカーの一部撤去を始めたと発表していたが、与正氏は談話でこれを否定した。
さらに与正氏は、韓国との関係について、「(北朝鮮としては)関係改善の意志が全くないことは何度も明らかにしてきたし、今後、憲法で固定化される」と強調。「国法に韓国が最も敵対的な勢力として表現され、永遠に定着されなければならない」とした。
与正氏が憲法改正に言及した中、9月に召集されることが決まった最高人民会議で、改正討議がなされるのか注目される。
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