<W解説>トランプ米大統領、今月下旬からアジア歴訪予定も、米朝首脳会談の実施は望み薄
<W解説>トランプ米大統領、今月下旬からアジア歴訪予定も、米朝首脳会談の実施は望み薄
米CNNテレビは18日、トランプ米政権の高官が、トランプ大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記との会談の実現のため、実施の可能性について非公式に話し合ったと報じた。トランプ氏は今月31日に開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせてアジアを歴訪する予定。アジア各国の歴訪も計画されており、この際に米朝首脳会談の開催はあるのか注目される。しかし、CNNテレビは「実現には懐疑的な見方が広がっている」と報じている。ただ、トランプ氏はかねてから米朝対話の再開に意欲を示している。金氏も、先月開かれた最高人民会議(国会に相当)で、米国が非核化を要求しなければ、向き合えないことはないと、条件付きでトランプ米大統領との対話が可能との認識を示している。

両氏は、トランプ氏が1期目の2018~19年に3回会談した。トランプ氏は朝鮮半島の非核化を求め、18年6月のシンガポールでの初会談ではこれに大枠で合意。しかし、19年2月のハノイでの会談で非核化のプロセスなどをめぐり交渉が決裂した。これを受け、北朝鮮は2021年に「国防5か年計画」を打ち出し、核・ミサイルを加速させた。23年には憲法に「核保有国として核戦力を高度化する」と明記した。

日本や韓国などが米国と連携して朝鮮半島の非核化を求めている中、米朝の早期の対話再開が望まれているが、トランプ氏は1期目の時のようには北朝鮮とのやりとりが行われていない。ただ、トランプ氏は4回目の米朝首脳会談の実施に意欲を示している。今年1月にはFOXニュースのインタビューに、金氏について「私は彼と仲が良かった、彼は賢い男だ」と述べ、「金総書記とまた接触を図るのか」との記者の質問に、「そのつもりだ」と述べた。トランプ氏は今年8月、韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領と会談した際も、金氏との再会談に意欲を見せた。李氏が「朝鮮半島に平和を築いてほしい。金総書記と会談して、北朝鮮に『トランプワールド』を建設し、世界史に残る平和をもたらすことを期待している」と述べると、トランプ氏は「金総書記とは良い関係にあったし、今もそうだ。彼は私に会いたいだろうし、こちらも楽しみにしている。関係をさらに良くしたいので、支持してほしい」と求めた。また、時期について当時、「年内に会いたいと思う」とした。

また、金氏も9月、首都・ピョンヤン(平壌)のマンスデ(万寿台)議事堂で開かれた最高人民会議で演説し、「もし米国が非核化の執念を捨てて、現実を認めるなら、対座しない理由はない」と対話の可能性に含みを持たせた。また、トランプ氏について「私はまだ個人的ないい思い出を持っている」と述べた。

また、金氏の演説に先立ち、今年7月には、金氏の妹のキム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長が、談話の中で米朝首脳会談の可能性について言及。トランプ氏と金氏との「個人的関係は悪くない」と述べ、与正氏も会談の可能性に含みを持たせた。一方、「わが国が不可逆的な核保有国の地位と能力を持ち、地政学的環境も根本的に変わった」とし、「米国が現実を受け入れなければ、(米朝)接触は米国の希望に終わる」とも述べ、非核化を前提とした交渉には応じない立場を示した。

トランプ氏は31日に開幕するAPEC首脳会議に合わせて、アジアを歴訪する予定で、CNNテレビはこれに関連し、トランプ政権の高官がこのほど、米朝首脳会談の実施の可能性について非公式に話し合ったと報じた。しかし、現時点で本格的な調整は行われていないという。また、CNNは「ホワイトハウスの警備チームが、トランプ氏の(韓国)到着に先立って韓国への視察を2度行ったが、いずれも(韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線にある)パンムンジョム(板門店)周辺には行かなかった」と指摘。「これは2019年の首脳会談のような再会が今のところは考えられないことを示唆している」と報じた。2019年6月に行われた、3回目の米朝首脳会談は板門店で実施。トランプ氏が現職の米大統領として初めて境界線を歩いて越えて北朝鮮に入る場面に、当時、世界が注目した。

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