<W解説>韓国・済州航空機事故から1年も、真相究明には至らず=事故調の独立性問題などで遅延
<W解説>韓国・済州航空機事故から1年も、真相究明には至らず=事故調の独立性問題などで遅延
韓国南西部のムアン(務安)空港で乗客乗員179人が死亡した韓国の格安航空会社(LCC)の航空機事故から2025年12月29日で1年となった。国土交通部(部は省に相当)傘下の航空・鉄道事故調査委員会が調べを進めているが、未だ事故の真相は明らかになっていない。遺族は調査の独立性と信頼性に疑念を抱いており、2025年7月に事故調が発表した中間報告にも強く反発した。

バンコク発の済州航空の旅客機は2024年12月29日午前、着陸時に不具合を起こして胴体着陸し、滑走路の先にあった土手状のコンクリート構造物に衝突した。この事故で、乗員・乗客179人が死亡した。韓国で発生した旅客機事故としては最大の被害、また、韓国機の事故としては、1997年に229人が死亡した大韓航空グアム墜落事故以来の人命被害が発生した。韓国紙の朝鮮日報は当時、事故現場の様子について「文字通り修羅場だった。空港の外壁に衝突した旅客機は胴体後部と尾翼の一部だけ何とか形が分かるほどしか残っていなかった。真っ二つに割れた機体の全部は完全にバラバラの状態だった。遺体の回収作業を行っている救助隊員らが『これほど残酷な現場は生まれて初めて見た』と口々に語るほどだ」と伝えた。

事故後、国土交通部傘下の事故調がコックピット音声記録装置(CVR)や飛行データ記録装置(FDR)、エンジンを回収。海外の専門機関に精密分析を依頼するなど調査に着手した。務安空港周辺は渡り鳥の飛来地で、事故直前に機体が鳥と衝突するバードストライクがあったとみられている。事故調は7月、バードストライクが起きた際、操縦士が鳥との衝突で損傷した右側のエンジンではなく、損傷のなかった左側のエンジンを誤って停止させていた可能性があるとの見解を示した。一方、遺族は事故調が操縦室の音声記録などを公開しないままこうした見方を示したことに、「操縦士の過失に責任を転嫁しようとしている」と反発。調査の信頼性を疑問視した。また、遺族らは事故調が国土交通部の傘下組織であることから、調査の公平性、独立性に疑問を抱いてきた。当初、委員長は国道交通部の元官僚だったが、その後辞任、現職の同部航空政策室長だった常任委員長も調査から外された。しかし、遺族の信頼回復には至っていない。韓国紙の中央日報によると、韓国航空大学のユン・ムンギル教授は同紙の取材に、「事故調の独立性問題は、昨日、今日に起こった話ではない。過去にも事故のたびに同様の問題が起きていたのに、国土交通部が事故調をなぜ独立させず傘下に置くのか理解しがたい」と話した。事故調は今月初め、公聴会を開いてさらなる調査結果を発表する予定だったが、遺族の反発を受け、見送られた。

事故から1年となった29日、同空港では遺族や政府関係者が出席して追悼式典が開かれた。同空港は事故後から旅客便の運航停止が続いており、事実上、閉鎖している。空港には事故発生時刻の午前9時3分に追悼のサイレンが響いた。式典に先立ち、イ・ジェミョン(李在明)大統領は、動画メッセージを発表。「どのような言葉でも十分な慰めにはならないことは承知しているが、国民の生命と安全を守る責任を負う大統領として、深くおわびを申し上げる」と謝罪した。また、李氏は動画の中で「形式的な約束や空虚な言葉ではなく、専門性の強化を積極的に推進し、旅客機事故の原因究明に最善を尽くす」と強調した。

国会では、調査委を国土交通部傘下から切り離し、首相直属の国務調査室に移管する内容を含む航空鉄道事故調査法改正案が可決される見通しとなっている。また、22日には、国会に事故の真相究明を目的とした国政調査特別委員会も発足し、活動を開始。事故から1年がたち、ようやく遺族が望む方向で動き出した形だが、韓国紙の東亜日報は「改正案が国会本会議など、残された手続きを電光石火で進めたとしても、調査の遅延は避けられない」と指摘した。

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