尹被告は2024年12月3日、予算案に合意しない野党の対応などを批判して「非常戒厳」を宣言。これは韓国憲法が定める戒厳令の一種で、戦時や事変など非常事態に、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。
1987年の民主化以降初めてとなる非常戒厳の宣言を受け、当時、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。
だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。
しかし、その後もしばらく社会の混乱は続いた。保守、革新の政治的な対立が激化し、社会の分断が進んだ。非常戒厳を宣言した尹被告は、昨年4月、憲法裁判所の弾劾審判で罷免されたほか、内乱首謀罪などに問われた。また、尹被告が罷免されたことを受け、昨年6月には大統領選が行われ、「社会統合」を掲げた革新系「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏が当選した。
尹被告が内乱首謀罪などに問われたこれまでの公判で、尹被告は「非常戒厳」について「軍には民間人との衝突を避けるよう指示し、国民に対する平和的なメッセージだった」などと正当性を主張し、起訴内容を全面的に否認してきた。
尹被告の論告求刑公判は当初、9日に結審する予定だったが、弁護人による証拠調べが長時間に及んだことなどから延期に。13日午前に再開し、検察側は「尹前大統領の戒厳宣布は憲法擁護及び国民の自由増進の責務に背いたものだ」と指摘。「被告人は反省していない。情状酌量の理由はなく、むしろ重刑が宣告されるべき」とし、死刑を求刑した。
韓国で大統領経験者が死刑を求刑されたのはチョン・ドゥファン(全斗煥)元大統領に次いで2人目。全氏は最終的に無期懲役が確定し、その後、特赦で釈放された。なお、韓国では1997年を最後に死刑は執行されていない。
韓国紙の朝鮮日報が伝えたところによると、この日、検察側が尹被告に死刑を求刑すると、傍聴席からは「でたらめだ」などと大声が飛んだという。尹氏の支持者とみられる。同紙記事は、検察が死刑を求刑した際の尹被告の様子について「あきれたように笑いながら首を横に振った」と伝えた。
さらに記事は「昨年4月に始まった尹前大統領の内乱裁判はこの日、9カ月を経て締めくくりを迎え、残るは宣告のみとなった。韓国の刑法は内乱首謀罪を死刑、無期懲役または無期禁錮に処すると定めている」とした上で、同罪は裁判所の判断で減刑も可能と前置きしつつ、「だが、法曹界からは『尹前大統領には減刑事由がないので、内乱罪が認められるとしたら無期刑が出る可能性が高い』との見方が出ている」と伝えた。
また、韓国紙のハンギョレは「なぜ尹前大統領一味が重い処罰を受けなければならないのか、国民は皆知っている」とした上で、「非道な軍事政権の『統治』を民主化運動で乗り越えた国民にとって、尹前大統領の『親衛クーデター』は決して容認できない妄動だった」と指摘。「国民は今、裁判所の判断を待っている。既に憲法裁判所が12・3(12月3日)非常戒厳の違憲性について判断したが、裁判所の判決は非常戒厳全般に対する法的判断として歴史に記録されるだろう」とし、「裁判所は、法律と良心に基づいて厳しく断罪し、韓国の民主主義がさらに堅固になることを願う国民の期待を裏切らないでほしい」と求めた。
判決は来月19日に言い渡される見通しで、裁判所の判断が注目される。
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