<W解説>「脱・脱原発」に舵を切った韓国・李政権=世論調査の結果受け、方向転換か
<W解説>「脱・脱原発」に舵を切った韓国・李政権=世論調査の結果受け、方向転換か
韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権が「脱・脱原発」に舵を切ることを決めた。前政権が2025年2月に公表した「電力需給基本計画(11次、2024~38年)」には、原発2基と次世代型原発の小型モジュール炉(SMR)の増設が盛り込まれているが、気候エネルギー環境部(部は省に相当)のキム・ソンファン長官は今月26日、同計画に基づき、新規原発の建設を予定通り推進すると発表した。李大統領はこれまで、新たに原発を建てず、既存の原発を活用する「減原発」を掲げてきたほか、再生エネルギーと原発を共存させる「エネルギーミックス」を前面に押し出してきた。しかし、李政権は一転して原発増設を発表。公共放送KBSは「かつて『脱原発』を掲げてきた革新系政権としては異例の対応で、国民の世論を踏まえ、実用主義に基づくエネルギー政策へと転換した形だ」と伝えた。

韓国の原発の新規建設計画をめぐっては、東部のキョンサンブクト(慶尚北道)ウルチン郡に新ハヌル原発3、4号機を建設する計画を盛り込んだ「第7次電力需給基本計画」が2015年に承認された。しかし、2017年に当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領が「エネルギー転換ロードマップ」と「第8次電力需給基本計画」に基づき、建設計画を白紙化した。2011年の東京電力福島第1原発事故や、原発が集中する韓国南東部での2016年の地震発生を受け、当時、韓国では原発の安全性に対する不安が高まっていた。2017年6月、文氏は「原発政策を全面的に再検討し、原発中心の発電政策を廃止する」と宣言。「準備中の新規原発建設計画を全面白紙化し、原発の設計寿命を延長しない。脱原発は逆らえない時代の流れだ」と述べた。

しかし、文政権の脱原発政策からの撤廃を主要国政課題の一つに掲げ、2022年5月に就任したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領は、原発を積極的に推進した。就任翌月に、キョンサンナムド(慶尚南道)・チャンウォン(昌原)にある原子炉メーカーを視察した際には「(文政権が)5年間、ばかげたことをせず、原子力発電のエコシステムをより強固に構築していれば、今頃はおそらく競合がいなかったはずだ」と述べ、文政権の脱原発政策を批判した。尹政権発足後、前出の新ハヌル原発3、4号機は建設許可が下りた。3号機は2032年、4号機は2033年に完成予定となっている。また、尹前政権は25年2月、出力の合計が2.8ギガワットとなる大型原発2基を2037年と38年に建設することや、35年までに小型モジュール原子炉(SMR)を建設することを盛り込んだ「第11次電力需給基本計画」を公表した。

同計画は、尹政権下で昨年2月に確定したが、同年6月に政権が変わり、李在明大統領が就任。政権与党となった革新系「共に民主党」からは、新たな原発建設について慎重な意見が相次いだ。李氏も「(新規原発の建設が)可能な土地があり、安全性が確保されれば(原発を建設)するが、私が見たところ現実性がない」と否定的な考えを示したことから、同計画は白紙化するものとみられていた。

しかし、今月行われた世論調査では、新規原発の建設に「賛成」と答えたのは7割近くに上った。「原発が必要だ」とする回答も8割を超えた。

こうした原発推進を求める世論を意識してか、増設に否定的だった李氏は21日、「必要であれば、安全性の問題も含めて(新設を)検討する余地がある」と述べた。李氏は「現在の国際的な流れやエネルギーの未来を考えると、膨大なエネルギー需要が存在するのは事実だ」とした上で、「昼間や風が吹くときは発電できるが、それ以外の時間帯では発電できない再生可能エネルギーの『間欠性』という課題、いわゆる基幹電力の確保という問題について、真剣に考える必要がある」と語った。

その後、前述したように気候エネルギー環境部のキム・ソンファン長官は26日の会見で、
「第11次電力需給基本計画」に基づき、新規原発の建設計画を予定通り推進すると発表した。韓国メディアによると、新規原発2基について、近く原発運営会社の韓国水力原子力が建設予定地の公募を始める予定という。30年代初めに建設許可を受け、37年と38年の完工を目指す。

李政権が一転して「脱・脱原発」に舵を切った形で、公共放送KBSは世論調査の結果に加え、「人工知能(AI)を活用する先端産業の競争力は、大規模な電力の安定的な供給なしには成り立たないという認識も、判断の背景にあるとされている」と伝えた。一方、通信社の聯合ニュースは「新規原発建設に対する政府の立場は固まったものの、時間を浪費したとの批判が高まることが予想される」と指摘した。

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