昨年8月の調査では、人骨が初めて見つかっている。初日の3日は、機材トラブルなどにより、ダイバーによる潜水は途中で切り上げられ、遺骨収容には至らなかったが、これまでの調査で遺骨がある場所は既に判明しており、今回の調査でも新たな遺骨が発見・収容される可能性が高い。同炭鉱での水没事故をめぐっては、先月13日の日韓首脳会談で取り上げられ、高市早苗首相とイ・ジェミョン(李在明)大統領は、発見された遺骨のDNA型鑑定に向けて日韓が協力を進めることを確認した。
長生炭鉱は宇部市の東部、瀬戸内海に面した床波海岸にあった海底炭鉱で、1914年(大正3年)に開鉱。最盛期には炭鉱内外で約1000人が働いていた。多くの石炭産出が求められていた太平洋戦争中の1942年2月、本抗口から約1キロメートルの坑道内で異常出水し、坑内で働いていた183人が犠牲になった。同炭鉱の労働者は朝鮮半島出身者が多く、「朝鮮炭鉱」とも呼ばれた。犠牲者のうち7割に及ぶ136人は朝鮮半島出身労働者だ。事故後、遺体が捜索されないままに抗口が閉じられ、犠牲者は海底に取り残された。
当時の報道はわずかで、長く事故について取り上げられることはなかったが、1991年、史実を正しく刻もうと、地元に市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会(刻む会)」が発足した。団体名に含まれる「水非常」とは、1942年に起きたような炭鉱での水没事故のことをいう。
同会はこれまで、追悼碑を建立したほか、同炭鉱の跡として残る排気・排水用の構造物「ピーヤ」の保存、事故を知る人の証言や資料の収集などの活動を行ってきた。また、毎年、事故の日に合わせ、韓国から犠牲者の遺族を招いて、追悼集会を行っている。さらに、事故の犠牲者の遺骨を見つけ、収容して遺族に返還しようと、クラウドファンディングで資金を集め、2024年からプロのダイバーによる独自の潜水調査を実施。昨年8月、内部で頭蓋骨と骨3本を発見し、収容した。その後、同会は、日韓両政府共同によるDNA型鑑定の早期実施を求めたが、しばらく進展がない状態が続いた。しかし、先月13日に行われた日韓首脳会談で、高市首相と韓国の李大統領は、DNA型鑑定に向けて日韓が協力を進めることを確認した。会談後の共同記者会見で李氏は「過去の歴史の問題で小さいながらも、意味ある進展を遂げることができ、本当に意義深いと思う」と述べた。
これを受け「刻む会」は先月20日、国会内で警察庁など関係省庁の担当者と面会した。同会によると、警察庁の担当者は、DNA型鑑定について実施主体や具体的な日程は日韓間で協議中だとした上で、「そう遠くない時期にできると思う」と話したという。同会の井上洋子代表は同日の記者会見で「DNA型鑑定での日韓首脳の合意を聞いた瞬間は本当に涙が出るくらい感動した」と話し、事態が大きく進展したことを喜んだ。
今月3日から、昨年8月以来、7回目の潜水調査が始まった。初日の3日、ダイバーは炭鉱の排気筒・ピーヤから海底坑道に進入。だが、水の濁りがひどく視界が悪かった上、機材トラブルも起きたため、ピーヤから約130メートル先で潜水を中止した。後日、海外からのダイバーも加わって調査を再開する予定。毎日新聞によると、刻む会の井上代表は「潜水調査は簡単ではない。世界中から集まったダイバーが加わってくれるので、遺骨に巡り合えることを確認したい」と話した。
前述のように、日韓両政府は遺骨のDNA鑑定を行うことでは合意した一方、遺骨の収集に向けた調査は同会が中心になって進めている。同会は国に調査を行うよう求めているが、厚生労働省は安全性などを理由に消極的な姿勢を取り続けている。先月30日、同省担当者や地質、鉱山、海洋工事の専門家らが現地を視察したものの、読売新聞によると、厚労省の担当者は「視察を終えたが、安全性の懸念は払拭されていない。今後の調査も予定していない」と話したという。
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