フリーダム・シールドは朝鮮半島の有事を想定し、毎年3月に行われる米韓合同軍事演習。毎回、朝鮮半島の有事に備え、両国の防衛体制などを点検している。また、米軍が現在持つ戦時作戦統制権を、有事の際に段階的に韓国軍へ移すための準備状況を確認する場にもなっている。
一方、北朝鮮はこの演習について、「(北朝鮮への)侵攻を想定した演習だ」として毎回、激しい反発を見せる。昨年3月に実施した際も、実施に先立ち、国営・朝鮮中央通信を通じて論評を発表。「朝鮮半島に情勢悪化の嵐をもたらす」と非難した。また、演習の規模が前年より拡大しているなどと主張し、「米国が軍事的な力の示威行為で記録を更新するならば、我々も当然、戦略的な抑止力の行使で、記録を更新するしかない」と対抗姿勢を示した。また、北朝鮮外務省は当時、「公報文」を出し、合同演習は「物理的衝突を誘発しかねない危険な挑発的妄動だ」として「最強硬対応」を予告。演習初日には弾道ミサイルを発射し、対抗した。
韓国は、ユン・ソギョル(尹錫悦)前政権では対北強硬路線を取り、軍事演習も規模を拡大させたが、昨年6月に発足したイ・ジェミョン(李在明)政権はこの路線からの転換を図った。李氏は南北関係の改善を進めようと、これまで北朝鮮に対話を呼び掛けている。李氏は、今月1日に開かれた独立運動の記念日「三・一節」の記念式典でも北朝鮮に言及し、「対話の場に出て、新たな未来に向けて共に進んでいくことを期待する」と述べた。また、「敵対ではなく共存と協力で、不信ではなく信頼の土台の上で共に成長する平和な朝鮮半島をつくることこそが『三・一革命』の精神を継承する道だ」とし、「敵対と対決は互いに何の利益にもならないという確固たる歴史の教訓から目をそらしてはならない」と訴えた。その上で李氏は、「わが政府は北側の体制を尊重し、一切の敵対行為も、いかなる吸収統一の追及も行わない。言葉だけでなく行動で北の軍事的緊張を緩和し、さまざまな措置を先制的に取ってきたように、朝鮮半島の平和と南北信頼回復のために必要な措置を一貫して推進していく」と強調した。
一方、北朝鮮は2023年に韓国との関係を「敵対的な2国家」とみなす路線転換を打ち出し、政策を推し進めている。先月開かれた北朝鮮の支配政党、朝鮮労働党の党大会で、キム・ジョンウン(金正恩)党総書記は李政権の融和的な姿勢は北朝鮮の体制を転換させるための「偽り」だと批判。韓国を「徹底的な敵対国、永遠の敵」とし、「同族という枠から永遠に排除する」と宣言した。
関係改善の糸口さえ見えぬ中、今年も北朝鮮が反発を見せる「フリーダム・シールド」の実施が迫った。韓国軍の合同参謀本部は先月25日に実施日程を発表したが、韓国軍と在韓米軍はこの時点で実動訓練の回数や規模などで合意できなかった。韓国の通信社、聯合ニュースは当時、「演習の主要な柱である野外機動訓練の規模に合意できないまま演習計画を発表したのは異例」と伝えた。合意できなかったのは、北朝鮮を刺激することを避けようと、韓国側が野外機動訓練の縮小などを提案したのに対し、米国側がこれに難色を示し、折り合えなかったためだ。
その後、在韓米軍と韓国軍は先月27日、演習期間中に野外機動訓練を22回実施することで合意したと明らかにした。尹前政権下で行われた昨年の51回に比べ、半分以下に縮小された。北朝鮮を刺激したくない韓国政府の意向が反映された形だ。韓国政府としては南北対話や米朝対話への機運を高めたい考えだが、前述のように、北朝鮮はとりわけ韓国との関係については「敵対的な2国家」とみなしている上、演習もそれ自体の実施に反発していることから、韓国側の想定通りの展開となる可能性は低そうだ。
Copyright(C) wowneta.jp
