<W解説>韓国・尹前大統領との決別を宣言した最大野党「国民の力」=6月に統一地方選、支持回復できるか
<W解説>韓国・尹前大統領との決別を宣言した最大野党「国民の力」=6月に統一地方選、支持回復できるか
韓国の保守系最大野党「国民の力」は今月9日、一昨年12月に「非常戒厳」を宣言し、罷免されたユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領の政治復帰に反対する内容の決議文を採択した。決議文は所属議員全員の名義で発表された。同党は尹政権時、与党として尹氏を支えてきた。党をめぐっては、これまで尹氏の復帰を支持する勢力と反対する勢力との対立が続いてきた。同党の岩盤支持層は依然、尹氏の回帰「ユン・アゲイン」を主張しているが、今回の決議では、尹氏の支持勢力と一線を画す意思を明確にした。これまで尹氏との「決別」を図りきれていなかった同党の支持率は低迷が続いている。6月には統一地方選挙を控えており、韓国紙のハンギョレは「惨敗の危機に直面したため、路線変更の道を選んだのだ」と解説した。

尹氏は同党が与党だった2024年12月、「非常戒厳令」を宣言。非常戒厳令は韓国憲法が定める戒厳令の一種で、戦時や事変など非常事態に、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。1987年の民主化以降初めてとなる非常戒厳令の宣布を受け、当時、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いたが、その後もしばらく社会の混乱は続いた。保守、革新の政治的な対立が激化し、社会の分断が進んだ。尹氏は罷免され、それに伴い昨年6月に行われた大統領選挙では革新系「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏が勝利。「国民の力」は野党に転落した。

一方、尹氏は内乱首謀罪などに問われ、裁判にかけられた。ソウル中央地裁は先月、尹被告に無期懲役を言い渡した。戒厳が内乱と言えるかが最大の争点だったが、裁判所は非常戒厳の宣言について「国会や政治活動を麻痺(まひ)させようとした目的が明確」と指摘。尹被告が国会に軍を送ったことは「内乱」と認定した。韓国で大統領経験者に無期懲役が言い渡されたのは、民主化を求める市民のデモを軍が武力で鎮圧した1980年5月のクァンジュ(光州)事件で内乱罪などに問われたチョン・ドゥファン(全斗煥)元大統領以来のことだった。

判決を受け、尹前政権時に与党として支えた「国民の力」は、チャン・ドンヒョク代表が記者会見を開き、心境を語った。チャン氏は尹氏に下された一審判決について「残念で惨憺(さんたん)たる思い」とした。その上で「『国民の力』は戒厳は内乱ではないという立場を明確にしてきた」とし、「一審判決はこのような主張を覆す十分な根拠や説明を示していない」と判決を批判した。

チャン氏はこれまで一貫して尹氏を擁護する姿勢を取り続けてきた。尹氏が宣言した戒厳令は有権者の大半が否定しており、罷免された尹氏をなおも擁護し続ける姿勢は支持者離れを招き、同党の支持率は低迷している。韓国ギャラップが今月3~5日に行った世論調査では、同党の支持率は21%で、与党「共に民主党」(46%)の半分以下だった。党内からはこれまで、「6月の統一地方選挙は戦えない」として、尹氏との「絶縁」を求める声が上がっていた。

「国民の力」は9日、緊急の議員総会を開き、「非常戒厳」について、当時、尹氏を支える与党の立場にあった党として謝罪し、尹氏の政治復帰に反対する内容の決議文を所属議員全員の名義で採択した。チャン代表を含む出席議員全員が起立する中、ソン・オンソク院内代表が決議文を読み上げた。決議文では「党内の対立を増幅させるあらゆる行動と発言を中止し、大統合に乗り出す」と強調してもいる。

韓国メディアによると、決議文の採択後、党幹部は「尹前大統領とわが党は関連がないという部分を明確にした」と述べた。公共放送KBSは「党として尹前大統領の復帰に反対する立場を明確にすることで、党内の混乱を収束させようとしているとの見方が出ている」と伝えた。尹政権時、批判的な論調を続けてきた韓国紙のハンギョレは、10日掲載の社説で、「『ユン・アゲイン』勢力との絶縁を公に宣言したことは、遅きに失したものの、幸いだと受け止められる」とした一方、「韓国国民としては9日の『絶尹宣言(尹氏との絶縁)』を歓迎しつつも、それが本気なのかは信じられないのが実情だ」と主張。6月に統一地方選挙を控える中、「急場をしのぐために、『偽装決別』を選んだのではないかと疑っているのだ」とした。2024年12月3日に、尹氏ら当時の政権の中枢が取った一連の行動を「憲政秩序の破壊を企てた」と批判する同紙は、「同党がなすことは明確だ。所属する国会議員一人一人が、内乱と弾劾の前後に示した憲政破壊勢力擁護の態度について、国民に受け入れられるまで謝罪することだ」と主張した。

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