フリーダムシールドは朝鮮半島の有事を想定し、毎年3月に行われる米韓合同軍事演習。毎回、朝鮮半島の有事に備え、両国の防衛体制などを点検している。また、米軍が現在持つ戦時作戦統制権を、有事の際に段階的に韓国軍へ移すための準備状況を確認する場にもなっている。
一方、北朝鮮はこの演習について、「(北朝鮮への)侵攻を想定した演習だ」として毎回、激しい反発を見せる。今回の演習の際は、開始翌日の今月10日、金総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党総務部長が演習を非難する談話を発表。与正氏は「敵対勢力の軍事力示威劇は、ともすると想像を絶するひどい結果を招くかもしれない」と警告した。同日、北朝鮮は駆逐艦からの戦略巡航ミサイルの試射を実施した。
また、14日には、首都・ピョンヤン(平壌)近郊にある順安(スナン)付近から日本海に向けて弾道ミサイル数十発を発射した。この発射に関連して、北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙、労働新聞は15日、金総書記の視察のもと、多連装ロケット砲の発射訓練を実施したと報じた。訓練では12発が発射され、約360キロ先の目標に全て命中したと報じた。国営の朝鮮中央テレビが放送した映像からは、金氏が娘と共に視察する様子が確認できる。金氏は訓練の目的について、「我々に敵対心を抱く勢力、すなわち420キロの射程圏内にある敵に不安を抱かせることだ」と話した。この発言について、韓国の通信社、聯合ニュースは「『420キロの射程圏』と言及することで、同兵器が韓国をターゲットにしていることを明確にした」と指摘した。
今回の「フリーダム・シールド」は、実際に部隊を動かす野外機動訓練の回数を、昨年の半分以下にとどめた。北朝鮮への刺激を避けたい韓国のイ・ジェミョン(李在明)政権の意向が反映された。ユン・ソギョル(尹錫悦)前政権では対北強硬路線が取られ、軍事演習も規模を拡大させたが、昨年6月に発足した李政権はこの路線からの転換を図った。李氏は南北関係の改善を進めようと、これまで北朝鮮に対話を呼び掛けている。李氏は、今月1日に開かれた独立運動の記念日「三・一節」の記念式典でも北朝鮮に言及し、「対話の場に出て、新たな未来に向けて共に進んでいくことを期待する」と述べた。
また、「敵対ではなく共存と協力で、不信ではなく信頼の土台の上で共に成長する平和な朝鮮半島をつくることこそが『三・一革命』の精神を継承する道だ」とし、「敵対と対決は互いに何の利益にもならないという確固たる歴史の教訓から目をそらしてはならない」と訴えた。その上で李氏は、「わが政府は北側の体制を尊重し、一切の敵対行為も、いかなる吸収統一の追及も行わない。言葉だけでなく行動で北の軍事的緊張を緩和し、さまざまな措置を先制的に取ってきたように、朝鮮半島の平和と南北信頼回復のために必要な措置を一貫して推進していく」と強調した。
一方、北朝鮮は2023年に韓国との関係を「敵対的な2国家」とみなす路線転換を打ち出し、政策を推し進めている。先月開かれた北朝鮮の支配政党、朝鮮労働党の党大会で、キム・ジョンウン(金正恩)党総書記は李政権の融和的な姿勢は北朝鮮の体制を転換させるための「偽り」だと批判。韓国を「徹底的な敵対国、永遠の敵」とし、「同族という枠から永遠に排除する」と宣言した。また金氏は23日、国会にあたる最高人民会議で施政方針演説し、韓国について「最も敵対的な国として認定する」と述べた。
19日、フリーダムシールドが終了した。韓国の通信社、聯合ニュースは「今回の演習では、近年の紛争の分析結果に基づき、現実的な脅威がシナリオに反映された」と伝えた、今回参加したのは約1万8000人で昨年と同規模だったという。米韓両軍は同日、共同で「演習を通じ、複合的な安全保障の脅威に迅速かつ効果的に対応する能力を強化した」などとコメントした。
一方、北朝鮮のメディアは20日、金総書記が19日に軍の訓練基地を訪れ、戦車部隊による演習を視察したと報じた。朝鮮中央通信によると、装甲部隊が対戦車ミサイルを発射。後方部隊が敵の無人機(ドローン)やヘリコプターを模した標的を攻撃し、歩兵や戦車の進撃路を確保したという。朝鮮中央テレビが放送した映像からは、訓練を視察した金氏が娘とともに戦車に乗る姿などが確認できる。金氏は「戦争準備の完成という飛躍的な成果へとつなげなければならない」と述べたという。19日に終了したフリーダムシールドへの反発を改めて示した形だ。
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