<W解説>日朝首脳会談に関する北朝鮮・金与正氏の談話から読み取れること
<W解説>日朝首脳会談に関する北朝鮮・金与正氏の談話から読み取れること
高市早苗首相が、今月19日の日米首脳会談で日朝首脳会談の実現に意欲を示したことを受け、北朝鮮側が23日、見解を発表した。キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)党総務部長は、談話を通じ、日本の首相と会談する意向はないとの立場を示した。

与正氏は「日本の首相が、われわれが認めてもいない一方的な議題を解決しようというのであれば、わが国家指導部には会う意向はなく、対座することもない」とした。「一方的な議題」とは日本人拉致問題を指すとみられるが、談話からは条件付きで交渉の余地をにじませているようにも受け取れる。歴代の首相は会談の実施に意欲を示しながら実現には至らなかった。高市氏はトランプ氏との会談で「私自身が金正恩氏と直接会う意思が非常に強い」と述べたという。早期に日朝首脳会談を行い、拉致問題の解決を図りたい考えで、今後も日朝間で駆け引きが続きそうだ。

日朝首脳会談は、2002年9月17日、当時の小泉純一郎首相が訪朝し、初めて行われた。キム・ジョンイル(金正日)総書記(当時)は北朝鮮による日本人拉致を認めて謝罪。拉致被害者5人は生存、8人は死亡と伝えた。会談で両首脳は「日朝平壌宣言」を交わした。同宣言で両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが双方の基本利益に合致し、地域の平和と安定にも寄与することになるとの共通認識を確認した。宣言には国交正常化交渉の再開や日本による植民地支配の謝罪、北朝鮮による核問題解決の約束遵守などが盛り込まれた。

翌月、拉致被害者5人が帰国。そして2004年、小泉氏が再訪朝し、拉致被害者の家族5人が帰国した。しかし、これ以降、拉致問題に関して手詰まり状態が長く続いた。その後、2014年に日朝両政府は北朝鮮による拉致被害者らの再調査と日本による独自制裁の一部解除を盛り込んだ「ストックホルム合意」を発表した。北朝鮮は特別調査委員会を設置したが、2016年に核実験とミサイル発射を強行。日本が独自制裁を強化したことを受け、北朝鮮は委員会の解体を宣言し、進展への期待もむなしくストックホルム合意もとん挫した。2018年6月と19年2月の米朝首脳会談では、トランプ米大統領が拉致問題を提起するも、北朝鮮が具体的な行動に出ることはなかった。拉致被害者は前述のように2002年に5人が帰国して以降、一人の帰国も実現していない。

その後、歴代の首相は日朝首脳会談の実現、そして、その先にある拉致問題の解決に意欲を示すも、北朝鮮側は「拉致問題は解決済み」と主張。この問題を議論する会談には応じる意思がないとの立場を貫いており、2004年5月以降、会談実現には至っていない。

昨年10月に就任した高市首相は「拉致問題は高市内閣の最重要課題」としており、解決に強い意欲を示している。昨年11月に、東京都内で開かれた拉致被害者の帰国を求める国民大集会に出席した際、北朝鮮側に首脳会談を要請したことを明らかにした。

今月19日に行われたトランプ米大統領との日米首脳会談でも、高市氏はトランプ氏に対し、「金正恩朝鮮労働党総書記と直接会う気持ちが非常に強い」と伝えたという。高市氏は会談後、記者団に対し、「トランプ大統領から拉致問題の即時解決に向けての全面的な支持を得た」と述べた。

これを受け、北朝鮮側は金与正氏が23日、談話を発表した。「日本の首相が、われわれが認めてもいない一方的な議題を解決しようというのであれば、わが国家指導部には会う意向はなく、対座することもない」とした。与正氏は「両国首脳が会うには、まず日本側が時代遅れの慣習から決別する決意を固める必要がある」とし、「拉致問題は解決済み」とする北朝鮮の立場を受け入れるよう求めた。その上で「旧態依然とした思考と実現不可能な執着にとらわれている相手と向き合って話すことはない」とした。さらに、「あくまで個人的な見解だが」と前置きした上で、「私は日本の首相が平壌に来る光景を見たくない」と付け加えた。

高市政権発足以降、北朝鮮の高官が日朝会談に関する見解を公式に表明したのは今回が初めてだ。談話の内容は北朝鮮側の従来の立場と同様だったが、「一方的な議題を解決しようというのであれば」との文面からは、条件次第では対話する余地があるとも読み取れる。

木原稔官房長官は24日の記者会見で、与正氏の談話への直接の言及は避けた上で、高市氏は会談を行う覚悟を持っていると改めて強調。拉致問題や、核・ミサイル問題など、日朝間の懸案の解決に向けて「米国をはじめとする国際社会と緊密に連携しながら引き続き努力を続ける」と述べた。
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