<W解説>「韓国は最も敵対的な国」とする、北朝鮮・金総書記の演説から見て取れる戦略的曖昧性
<W解説>「韓国は最も敵対的な国」とする、北朝鮮・金総書記の演説から見て取れる戦略的曖昧性
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記は今月23日、国会にあたる最高人民会議で、韓国について「最も敵対的な国」とし、「いかなる行為にもちゅうちょなく無慈悲な代価を払わせる」と述べた。北朝鮮は最近、南北関係を「敵対的な国家関係」と位置づけ、強硬姿勢を取り続けている。しかし、北朝鮮の憲法第9条には「祖国統一を実現するために闘う」との内容が盛り込まれており、金氏が進める政策とは矛盾する状態となっている。今回の最高人民会議では憲法改正が議題になった。そのため、韓国を「敵対国」と規定した現在の対韓対策に沿う形で条文が修正されるのではないかとみられていたが、この部分の取り扱いがどうだったのかは明らかになっていない。

22、23日の両日開かれた最高人民会議では、金氏が最高指導者に当たる国務委員長に再任されたほか、憲法改正や党大会で示された新たな国家経済発展5か年計画の遂行などが議論された。

金氏は会議で行った施政方針演説で、対外政策に関連し、「発展権と安全圏、生存権を守るため、取り得るあらゆる手段を講じるとの立場は絶対不変」とした上で、「核保有国の地位を絶対に後退させず、引き続き堅固にし、敵対勢力のあらゆる反共和国挑発策動を打ち砕くための対敵闘争を積極的に展開していく」と述べた。

具体的な国名を挙げて言及したのは米国と韓国だけで、米国に関しては「今、世界各地で国家テロや侵略行為を行っている」とし、イラン攻撃などを念頭に非難した一方、トランプ米大統領への直接的な批判は避けた。

韓国に関しては「最も敵対的な国として認定し、徹底的に排斥し、無視する」とし、「手を出せば容赦なく代償を支払わせる」と警告した。今回の演説内容について、韓国紙のハンギョレは「金委員長(総書記兼国務委員長)が演説で示した対南政策を含む対外政策は、従来の『核放棄不可』及び『反統一敵対的2国家』路線の再確認だと考えられる」と指摘した。

一方、同紙は「金委員長の演説は、従来の対南政策基調とは異なる論理も見受けられる」と指摘した。金氏が「われわれの敵どもが対立を選ぶにしろ、平和的共存を選ぶにしろ、それは彼らの選択の問題であり、われわれはいかなる選択にも対応する準備ができている」と述べたことを挙げ、「これはひとまず『米国が真の平和共存を望むなら、われわれも米国と向き合えない理由はない』とした昨年9月の最高人民会議第14期第13回会議での演説を思い起こさせる」とし、歩み寄る余地を残したことを指摘。「金委員長が『敵ども』という複数形を用いていることに照らすと、『敵ども』には米国だけでなく韓国も含まれると考えられる」と分析した。

また、今回の会議では、改憲をめぐる議論があり、憲法の修正・補充に関する法令が採択されたというが、韓国との関係を「敵対的な二つの国家」と明文化する憲法改正が行われたかどうかは明らかになっていない。このことについて、韓国紙の中央日報は「戦略的曖昧性を最大限に高め、不確実性を拡大させて今後の情勢変化に応じて行動の余地を柔軟に調整しようとする意図とみられる」と分析した。金氏は近年、韓国との平和的統一を放棄する方針を示しており、2004年1月の最高人民会議の施政方針演説で、「韓国を徹頭徹尾、第一の敵対国、不変の主敵と見なす」と憲法条文に明記するよう改正を指示。しかし、その後、具体的な動きは今回の会議も含め確認されていない。

韓国大統領府は24日、金氏が演説で「韓国は最も敵対的な国」と表現したことに関し「韓国政府は敵対的な言葉が続くことは平和共存に役立たないという立場だ」とした。その上で、「朝鮮半島で南北双方の安定と繁栄を担保できる道は敵対と対決ではなく、対話と協力を通じた平和共存だ」とし、「韓国政府は長期的な視点を持って、朝鮮半島の平和共存政策を推進していく」と述べた。
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