<W解説>6月開幕のサッカーW杯、韓国での放送はどうなるのか?=ミラノ五輪に続き、1社が独占中継?
<W解説>6月開幕のサッカーW杯、韓国での放送はどうなるのか?=ミラノ五輪に続き、1社が独占中継?
6月に開幕するサッカーのワールドカップ(W杯)北中米3か国大会の中継権をめぐり、韓国で有料放送局JTBCと、地上波放送局3社間との交渉が難航している。JTBCは同大会の独占放映権を獲得したが、五輪やW杯、アジア大会など「国民の関心イベント」について、「国民の90%が視聴できるべき」と韓国の放送法が定義する「普遍的視聴権」が保障されるよう、KBS、MBC、SBSの地上波3社と中継権の再販売交渉を続けている。先月30日、ソウル市内でJTBCと地上波3社間で協議の場が設けられた。韓国メディアによると、この日、合意には至らなかった。毎日経済は、「進展はなかった」と話す地上波放送局の関係者の声を伝えている。

JTBCは韓国紙・中央日報系のケーブルテレビ局。社名のJTBCは「中央東洋放送」(Joongang Tongyang Broadcasting Company)の略で、2011年12月に開局した。同局は2026年~32年までの冬季・夏季五輪と、昨年から30年までのFIFA(国際サッカー連盟)W杯の単独放映権を確保している。

そのため、今年2月に開かれたミラノ・コルティナ冬季五輪は、韓国では地上波の中継はなく、JTBCが独占中継した。スノーボード女子ハーフパイプ(HP)では、チェ・ガオン選手が冬季五輪のスキー種目で韓国代表選手として初めて金メダルを獲得したが、チェ選手のメダル獲得の瞬間を、韓国の多くの視聴者はリアルタイムで見ることができなかった。単独で五輪中継した同局は、当時、本チャンネルではスノーボードの中継を途中で打ち切り、ショートトラックの中継へと切り替えていた。スノーボードは同局のスポーツチャンネルで放送が続けられた。チェ選手の3回目の試技と金メダルが確定した瞬間を多くの視聴者が見逃すこととなり、これに視聴者からは「歴史的瞬間を見逃した」などと不満が高まった。本チャンネルではチェ選手の金メダル確定のニュースを字幕速報するのみだったため、「初の金メダルが字幕だけとは」と批判の声も上がった。

韓国ではケーブルテレビやIPTVなどの有料放送の加入率が90%を超えており、地上波のみでテレビを視聴する世帯は少数だ。そのため、JTBC側は大会前、地上波で中継が行われなくても、視聴のしやすさに大きな支障はないとしていた。しかし、同局によるミラノ五輪開会式の中継の視聴率は1.8%で、地上波3局が中継した前回の北京大会(18%)に比べ10分の1になった。高齢層を中心に、地上波に慣れ親しんでいた視聴者も多く、ケーブルテレビ局の同局による五輪単独中継は、結果的に韓国国民の五輪に対する関心低下も招いたとも指摘されている。

韓国の放送法は五輪やW杯といった国民的スポーツイベントについて「国民の90%が視聴できるべき」と定義する「普遍的視聴権」を保障するよう定めている。国民からは、ミラノ五輪でこの権利が侵害されたとの声も高まった。

イ・ジェミョン(李在明)大統領は先月、ミラノ五輪に出場した韓国選手団を青瓦台(大統領府)に招いて開いた昼食会で、国際大会の中継放送のあり方を見直す考えを示した。李氏は「国民の誰もが手軽に国際大会を視聴できるよう制度を改善する」とし、選手たちがより多くの国民の応援の中で夢の舞台に立てるよう、政府が後押しすることを約束した。

前述のように、JTBCは2019年に26~32年までに開かれる全ての五輪とW杯の中継権を買い取った。しかし、地上波各局からの反発もあり、同局はその後、五輪中継をめぐり、KBS、MBC、SBSの地上波3局と、放送権の再販売に向けた交渉を行ったが、条件面で折り合いがつかず、結局、ミラノ大会は同局が単独中継することになった。

五輪後、「普遍的視聴権」をめぐる議論が高まる中、JTBCは6月のサッカーW杯北中米大会の中継権をめぐって地上波3局と中継権の再販売交渉を進めている。先月30日、協議の場が設けられ、JTBC側は中継権料の50%を自社が負担し、残りを地上波3社が約16.7%ずつ頭割りで支払うとする案を提示した。JTBC側は「普遍的視聴権に対する懸念などを考慮し、大きな赤字を甘受しながら出した最後の提案」だとした。しかし、交渉は決裂したという。JTBCはW杯北中米大会の中継権を約1億2500万ドル(約199億円)で獲得したというが、地上波3社側は「JTBCが中継権を確保する過程で発生した費用をこちらに転換している」と反発しているという。

大統領直属機関の放送メディア通信委員会のキム・ジョンチョル委員長は先月30日、「放送法上、普遍的視聴権は市場にのみ委ねられない公的課題である点を踏まえ、国民の目線で交渉が行われるべきだ」と指摘。「(放送局は)中継料が発生する経済的損害だけを語ってはならず、各社が持つ公的責任と連帯的価値という原則の土台の上で交渉が行われるよう努めてほしい」と求めた。

交渉が最終的に決裂した場合、ミラノ五輪に続きW杯もJTBCのみで中継される前例のない事態になる。
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