<W解説>北朝鮮の金与正氏談話に希望抱くも、直後に一蹴された韓国=北の真意図る難し
<W解説>北朝鮮の金与正氏談話に希望抱くも、直後に一蹴された韓国=北の真意図る難し
民間の無人機(ドローン)が韓国側から北朝鮮に侵入した事件をめぐり、韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領が今月6日、遺憾の意を表明し、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)党総務部長が李氏の対応を肯定的に評価する談話を発表した中、北朝鮮側は翌7日、追加の談話を出した。与正氏の談話に、韓国大統領府は「南北首脳間の迅速な意思の確認」と受け止めていたが、追加の談話では、この受け止めを「希望交じりの夢占いだ」と一蹴。「(与正氏による)談話の核心は明確な警告だ」として、韓国側の解釈は誤りだと指摘した。北朝鮮が韓国を「最も敵対的な国家」と位置付けている中、与正氏が韓国の大統領に対して肯定的なメッセージを送ったことから、韓国側は関係改善に向けた進展と捉えたが、北朝鮮側の真意は違うことが明らかになり、肩透かしを食らった形だ。

無人機侵入事件は、韓国の民間人らが昨年9月から今年1月まで、4回にわたって南北の軍事境界線を越えて無人機を北朝鮮側に飛行させ、北朝鮮南部のケソン(開城)一帯を撮影した問題だ。北朝鮮は当時、墜落機の写真を公開し、声明で韓国を強く非難した。

この事件について李大統領は今月6日の閣議で、「わが政府が意図したことではないが、一部の無責任で無謀な行動により不必要な軍事的緊張が誘発されたことについて、北側に遺憾の意を表する」と述べた。李氏はこれまでもこの事件について強く批判してきたが、北朝鮮に対して、直接遺憾の意を表したのは初めてのことだった。

李氏の遺憾表明に、韓国国会内では野党側から「屈従的な北朝鮮観」だとして批判が上がったが、北朝鮮が韓国を「最も敵対的な国家」と位置付けている中、李氏の対応は、朝鮮半島の緊張緩和を図る融和のシグナルとの受け止めが広がった。

韓国メディア中にも、李氏の対応を評価する論調が見られ、韓国紙のハンギョレは7日掲載の社説で、無人機侵入については、国家情報院の職員や現役軍人が事件に直接的または間接的に関与していた事実が明らかになっているとして、「南北の和解と統一を追及してきた民主政権の首長であり、軍の統帥権者である李大統領が、黙って見過ごすわけにはいかない段階という意味だ。この点において李大統領のメッセージは内容と時期において適切だったといえる」と評価した。

李氏の遺憾表明を受け、当の北朝鮮は即座に反応した。金与正氏は6日夕に発表した談話で「大統領が直接遺憾の意を表し、再発防止措置に言及したのは非常に幸いで、自らのための賢明な行為であると評価する。わが国家元首(金正恩総書記)はこれを率直で度量の大きい人の姿勢を見せたものだと評価した」と述べた。一方、韓国に対し、言葉だけで平和と安定を唱えるのではなく、一切の挑発行為を中止すべきだと強調。主権を侵害する行為が再び起これば、耐えがたい代償を払うことになると警告した。

与正氏が李氏による遺憾表明を肯定的に評価する談話を即座に発表したことに、韓国大統領府は「南北首脳間の迅速な意思の確認」、統一部(部は省に相当)は「平和共存に向けた意味のある進展だ」と受け止めた。

しかし、北朝鮮側の真意は違ったようだ。韓国側の反応を受け、北朝鮮は7日、追加の談話を発表。チャン・グムチョル第1外務次官は、「韓国側は、わが政府の迅速な反応を『異例の友好的反応』『首脳間の迅速な相互意思確認』と受け止めて的外れなことを言っているが、これは愚かな馬鹿者たちによる希望を込めた勝手な解釈だ」と批判。その上で(与正氏の)談話の骨子は「安全のためには率直に自分たちの罪を認めるべき」とする「明確な警告」だったとした。

チャン氏の談話について韓国の公共放送KBSは「専門家は、韓国向けのメッセージの『友好的な解釈』が広がるのを遮断する狙いがあるとみている」と伝えた。

南北関係の改善を目指すも、対話再開の糸口をつかめない李政権は、今回、与正氏が李氏を評価する談話を発表したことから、局面打開につながるかと希望を抱いたが、無下にされた形だ。

チャン氏の談話を受け、大統領府は8日、「非難や侮辱的な言葉は朝鮮半島の平和と安定に寄与しない」とした上で、「政府は相互尊重を基に、朝鮮半島の平和共存に向けた努力を続け、北側も応じることを願う」と求めた。
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