<W解説>韓国・統一相の発言が波紋=一般に知られていない北朝鮮の核施設に言及し、米国が不信感
<W解説>韓国・統一相の発言が波紋=一般に知られていない北朝鮮の核施設に言及し、米国が不信感
韓国統一部(部は省に相当)のチョン・ドンヨン(鄭東泳)長官が先月の国会外交統一委員会で、北朝鮮のウラン濃縮施設の場所として、ヨンビョン(寧辺)、カンソン(降仙)のほか、クソン(亀城)に言及したことが波紋を広げている。亀城はこれまで米韓の情報当局が公式に取り上げたことがない核開発疑惑地域だ。米国側は米韓同盟の枠組みの中で慎重に扱うべき安全保障情報を鄭氏が安易に公開したことを問題視。韓国側に抗議の意を伝えたほか、韓国との北朝鮮情報の共有を一部制限した。一方、鄭氏は20日、「北の核問題の深刻さを伝えるため政策を説明したことだが、これを情報流出と仕立て上げられることは極めて遺憾だ」と述べた。最大野党「国民の力」は鄭氏の更迭を求めている。

米国が問題視したのは先月6日の国会外交統一委員会での鄭氏の発言だ。鄭氏は「国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長が3月2日の理事会で行った報告の中に、非常に深刻な報告がある」とした上で、「現在、(北朝鮮には)寧辺、亀城、降仙にウラン濃縮施設があり、イランの濃縮ウランは(濃縮率が)60%なのに対し、北朝鮮は90%の兵器級ウランを製造していると報告した」と述べた。鄭氏の発言は韓国政府高官が北朝鮮のウラン濃縮施設の所在地として亀城を初めて取り上げたことから、注目を集めた。亀城にあるウラン濃縮施設は、これまで米シンクタンクやメディアなどで指摘されてきたが、米韓の情報当局が公式に言及したことはない。発言当時、韓国の通信社、聯合ニュースは「政府高官が公式の場で言及するのは異例だ」と伝えた。

核施設の位置などは最高レベルの機密情報に分類される。具体的な位置が公開されれば、北朝鮮に衛星の軌道などを逆追跡されかねず、遮蔽(しゃへい)、通信の変更がされる可能性がある。それだけに、米国側は鄭氏の発言を問題視。複数のチャンネルを通して韓国政府に抗議した。技術関連など、北朝鮮に関する情報に関して、韓国との共有を一部制限する措置も取った。

一方、鄭氏は、自身が発言した内容について米シンクタンクの報告書や報道などで既に取り上げられているとし、「公開されている情報だ」としている。一方、最大野党「国民の力」は「無責任な言動であり、韓国の安全保障にとって最も重要な資産である米国の対北情報の共有が制限された」と批判し、鄭氏の更迭を求めた。

鄭氏は南西部のチョルラナムド(全羅南道)スンチャン郡出身の72歳。ニュースキャスターを経て政治家となり、2007年には大統領選にも出馬したが落選した。北朝鮮に融和的な立場で知られ、対話重視を掲げるイ・ジェミョン(李在明)政権の対北朝鮮政策を象徴する存在だ。ノ・ムヒョン(盧武鉉)政権でも統一部長官を務め、2005年6月には北朝鮮を訪問し、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の父、キム・ジョンイル(金正日)国防委員長との電撃面談を果たした。

韓国紙の中央日報は21日掲載の社説で、米国側が鄭氏の発言を問題視していることについて、「問題は亀裂が実質的な安全保障の空白につながる点だ」と指摘。「現在、中東情勢などで米国の朝鮮半島防衛資産の一部が移動配備されているところに情報共有まで縮小されれば、対北朝鮮監視体制の低下は避けられない。北朝鮮はこうした隙を狙ってさらに果敢で賢く挑発レベルを高めていくだろう」と懸念を示した。さらに社説は「鄭長官は自他が認める南北対話論者であり、平和主義者だ」とし、「南北和解と平和を重視しているだけに、言動には格別に留意し、韓国の安全保障の最後の砦(とりで)である同盟を損傷させることがないようにしなければならない」と主張した。

また、韓国紙の東亜日報は「今回の問題を機に表面化した米国側の不満の背景には、これまでの懸案をめぐる韓米間の不協和音もあるとみられている」と指摘。「南北関係の打開を目指す中で、鄭氏は韓米ワーキンググループの推進や対北朝鮮制裁、非武装地帯(DMZ)関連法などをめぐり、米国側と見解の違いを見せてきた。今年に入ってからも在韓米軍のソヘ(西海)上空訓練、韓米合同軍事演習の規模調整、在韓米軍戦力の中東転用などをめぐり、韓米軍当局間で軋轢(あつれき)が表面化した。特に米・イラン戦争で顕在化した在韓米軍戦力の中東転用をめぐっては、韓米間の意思疎通が円滑でなかったとも伝えられている」と解説した。

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