JTBCは2019年に、6年~32年までの冬季・夏季五輪と、昨年から30年までのFIFA(国際サッカー連盟)W杯の単独放映権を確保し、その後、前出の地上波3社に放映権の再販売を試みたが交渉が決裂した。そのため、今年2月に開かれたミラノ・コルティナ冬季五輪は、韓国では地上波の中継はなく、JTBCが独占中継した。スノーボード女子ハーフパイプ(HP)では、チェ・ガオン選手が冬季五輪のスキー種目で韓国代表選手として初めて金メダルを獲得したが、チェ選手のメダル獲得の瞬間を、韓国の多くの視聴者はリアルタイムで見ることができなかった。単独で五輪中継したJTBCは、当時、本チャンネルではスノーボードの中継を途中で打ち切り、ショートトラックの中継へと切り替えていた。スノーボードは同局のスポーツチャンネルで放送が続けられた。チェ選手の3回目の試技と金メダルが確定した瞬間を多くの視聴者が見逃すこととなり、これに視聴者からは「歴史的瞬間を見逃した」などと不満が高まった。本チャンネルではチェ選手の金メダル確定のニュースを字幕速報するのみだったため、「初の金メダルが字幕だけとは」と批判の声も上がった。
JTBCは韓国紙・中央日報系のケーブルテレビ局。社名のJTBCは「中央東洋放送」(Joongang Tongyang Broadcasting Company)の略で、2011年12月に開局した。
韓国ではケーブルテレビやIPTVなどの有料放送の加入率が90%を超えており、地上波のみでテレビを視聴する世帯は少数だ。そのため、JTBC側はミラノ五輪前、地上波で中継が行われなくても、視聴のしやすさに大きな支障はないとしていた。しかし、同局による大会開会式の中継の視聴率は1.8%で、地上波3局が中継した前回の北京大会(18%)に比べ10分の1になった。高齢層を中心に、地上波に慣れ親しんでいた視聴者も多く、ケーブルテレビ局の同局による五輪単独中継は、結果的に韓国国民の五輪に対する関心低下も招いたとも指摘された。
前述のように、韓国の放送法は五輪やW杯といった国民的スポーツイベントについて「国民の90%が視聴できるべき」と定義する「普遍的視聴権」を保障するよう定めている。国民からは、ミラノ五輪でこの権利が侵害されたとの声も高まった。
五輪が閉幕し、次の国民的スポーツイベントであるサッカーのワールドカップ(W杯)北中米3か国大会の開幕が6月に迫る中、この大会の独占中継権も獲得していたJTBCと、地上波放送局3社間で放送権をめぐる交渉が続いた。しかし、難航し、MBCとSBSとの交渉は不発に終わったが、先月20日、JTBCは大会に関し、KBSと共同中継することで合意したと明らかにした。KBSはJTBCが提示した中継権料140億ウォンの負担を受け入れた。
W杯のJTBCと公共放送KBSの共同中継が決まり、2月の五輪から大きな議論となってきた「普遍的視聴権」をめぐる問題はひとまずは緩和された形だが、KBSは民間事業者が確保した高額の中継権料の一部を背負う形となった。
MBCとSBCが交渉から外れた中、なぜKBSだけがJTBCとの共同中継に合意したのか。理由はKBSが公共放送であるという事情がありそうだ。JTBCによる五輪の独占中継に国民の不満が高まり、その後「普遍的視聴権」が議論となる中、次に控える国民的スポーツイベントのW杯ではその権利を保障するため、公共放送としてこの問題に背を向けてはいられぬ事情があったものとみられる。実際、KBSは「相当な赤字が予想されるが、公共放送としての責務を果たすため、JTBCが提示した最終金額を受け入れた」と説明している。
大会の開幕が迫る中での劇的な交渉妥結。毎日経済によると、KBSのソン・ジェヒョク・スポーツセンター長は「通常、ワールドカップの準備には1年かかることを踏まえると、時間が足りないのは事実」とした上で、「長年の中継ノウハウを基に、視聴者に質の高い放送を提供する」と話している。
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