訪韓するのは首都ピョンヤン(平壌)を本拠地とする「ネゴヒャン(私の故郷)女子蹴球団」で、選手27人と関係者を合わせ総勢39人。中国経由で17日に韓国入りする予定。ネゴヒャンは20日にソウル近郊の水原で行われる女子ACLの準決勝で、韓国の水原FCウィメンと対戦する。
韓国と北朝鮮の関係をめぐっては、近年、断絶状態となっている。北朝鮮は、韓国を「第一の敵対国」と位置づけており、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記は今年3月、国会にあたる最高人民会議で韓国に関して「最も敵対的な国として認定し、徹底的に排斥し、無視する」と改めて主張。「手を出せば容赦なく代償を支払わせる」と警告した。
一方、韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は、事あるごとに北朝鮮に対し、対話の再開を呼び掛けている。金氏と韓国のムン・ジェイン(文在寅)元大統領が「朝鮮半島の完全な非核化」をうたった「パンムンジョム(板門店)宣言」に署名してから8年となった先月27日、李氏は記念式典に祝辞を寄せ、「戦争の終結と恒久的な平和体制、南北の共存と繁栄は板門店宣言の中核精神であり、われわれが向うべき未来だ」とした上で、「国民主権政府(李政権)は発足以来、朝鮮半島の平和的な共存を最優先の政策目標に掲げた。そのため、南北の信頼回復に向けた先鋭的な措置を講じてきた」とし、「北側の体制を尊重し、吸収統一を追及せず、一切の敵対行為を行わないという原則も明確に示してきた」と強調。北朝鮮に対し、「わが政府の真摯(しんし)な姿勢を信じ、呼応することを期待している」と呼び掛けた。さらに李氏は「平和的な共存と共同成長に向けた努力を一つずつ積み重ねていけば、本格的な春が朝鮮半島に再び訪れると信じている」とした。だが、李氏による繰り返しの対話の呼びかけもむなしく、北朝鮮は拒否し続けている。
南北のスポーツ交流をめぐっては、2018年2月に韓国で開催されたピョンチャン(平昌)冬季五輪に、北朝鮮は大規模な選手団を派遣した。南北合同チームも組まれ、それまで冷え込んでいた南北関係の改善にもつながった。しかし、その後の関係悪化や新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、交流は途絶えた。今回、北朝鮮選手団が韓国を訪問するのは、同年12月の卓球の国際大会以来となる。女子サッカーチームに限れば、2014年のインチョン(仁川)アジア競技大会以来、12年ぶり。
ネゴヒャンの訪韓が決まり、韓国大統領府は4日、「ネゴヒャン蹴球団のAFC女子チャンピオンズリーグ準決勝への出場を歓迎する」とした上で、「政府はAFC、水原FCウィメンと共に、選手団が試合を円滑に戦えるよう協力していく」とする声明を発表した。
韓国メディアも北朝鮮選手の8年ぶりの訪韓を大々的に伝えている。韓国紙の中央日報は北朝鮮側の思惑を推測する記事も掲載。「韓国で開かれる試合に参加するのは、正常国家のイメージ構築に余念のない金正恩国務委員長(総書記)が今大会を通じて国際社会に『女子サッカー強国』のイメージを印象付けようとする意図が背景にあるのではないかとの分析が出ている」と伝えた。サッカー女子の北朝鮮代表はアジアではトップクラスの実力とされる。
また、18年の平昌五輪がきっかけで、南北関係が急速に改善した例があることから、韓国内では今回の北朝鮮選手の訪韓が南北関係に肯定的な影響をもたらすことを期待する向きもある。これに関連し、韓国紙のハンギョレは5日掲載の社説で「国際スポーツ大会であるだけに、韓国政府が過度な『政治的意味』を付与するよりも、久々に訪ねてくる同胞の選手たちを温かく迎えるなど、側面的な支援を充実させることが賢明だと思われる」としつつ、政府に対し「南北対話が断絶した『非日常的な状況』が少しでも改善されるよう、水面下で最善の努力を尽くしてほしい」と求めた。
Copyright(C) wowneta.jp
