韓国の統一地方選は4年に一度行われており、今回は広域自治体の市長・道知事16人、区庁長・市長・郡守(郡の首長)227人、広域自治体の市・道議員933人、区・市・郡議員3035人、教育庁トップの教育監16人が選出された。併せて国会議員の補欠選挙も同時に行われた。今回は、発足から1年を迎えたイ・ジェミョン(李在明)政権の中間評価の性格も帯びた選挙となった。
開票の結果、与党「共に民主党」が全国16の広域自治体首長選のうちプサン(釜山)やウルサン(蔚山)など12か所で勝利。李政権に対する国民の支持が反映された形となったが、人口の約5分の1が集中する首都・ソウル市の市長選では、李大統領に近い同党のチョン・ウォンオ氏が、最大野党「国民の力」の現職、オ・セフン氏に僅差で敗れた。
与党大勝の結果となった今回の統一地方選だが、一部の投票所で投票用紙が不足する事態が発生。追加の用紙が届くまで有権者が長時間待たされたり、投票を諦めたりするなど混乱した。中央選挙管理委員会は3日、記者会見し、「公正な選挙管理への国民の信頼を損ねた」として謝罪した。選管の発表によると、投票用紙は全国91か所で計7194枚不足し、最長105分にわたり手続きが中断した。
選管は用紙が不足した原因について、一部で想定を上回る投票者数となったためと説明している。報道によると、中央選管は各選管に対し、有権者が期日前投票に分散するだろうとの判断から投票用紙の印刷枚数を有権者数の最低50%まで引き下げることを容認する指針を出していたことが分かった。しかし、投票率は予測を上回り61.0%だった。
投票用紙の印刷枚数を絞ったのはコスト削減など、昨今の様々な事情を考慮したという理由も当然あろう。しかし、韓国ではこのところ、「余った投票用紙が不正に流用されている」といった不正選挙疑惑が取り沙汰されている。有権者から疑いの目で見られることを避けるため、選管には用紙の残数をなくそうという防衛心理が強く働いたとも指摘されている。
選挙の公正性と管理体制の信頼を揺るがす事態に、ノ・テアク中央選管委員長が引責辞任に追い込まれた。李大統領も7日、「国民主権の根幹を棄損(きそん)した」と選管の対応に遺憾の意を表明した。また、一部の有権者からは再選挙を求める声が上がっている。抗議の動きは大学にも広がっており、全国16の大学の学生自治会は10日、徹底した真相究明と再発防止などを訴えた。公共放送KBSは「専門家の間では、受験や就職活動など競争を経験してきた若い世代ほど手続きの公正性に敏感であることから、今回の事態をめぐる問題意識が大学を中心に広がっているとの分析も出ている」と伝えた。
韓国紙の中央日報は投開票日の翌日(4日)掲載の社説で「民主主義を支える投票制度の根幹を棄損する事態が発生したのは残念でならない」とし、「大韓民国の選挙史上、類を見ない汚点だ」と批判。与野党に対し、「選挙システムの信頼回復に向けて知恵を絞らなければいけない」と求めた。
韓国紙ハンギョレも7日掲載の社説で「今回の事態は民主主義の要である選挙制度への不信を生じさせた『国の規律の乱れ』と言っても過言ではない。さらに、選挙の信頼性と公正性を高めるべき選管が不信を助長したという点で、到底容認できない」と批判した。さらに社説は「最高裁判事が中央選管委員長、裁判所長が市・道選管委員長を務めるという、司法府が選管を『兼任』する構造のせいで選挙業務の専門性が低下し、このような事態が繰り返されているとも指摘されている」とし、「全ての代案を網羅して、選管解体レベルの改革を実行すべきだ」と訴えた。
問題を受けて、警察や検察は捜査に乗り出した。ソウル警察庁は11日、中央選管や用紙不足の問題が起きたソウル市のソンパ区、カンナム区などの選管に強制捜査に入った。公職選挙管理法違反などの疑いで調べている。通信社の聯合ニュースによると、警察はこの日の捜索に、捜査員約100人を投入したという。
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