韓国の国防白書は国家の安全保障政策や国家の防衛の根幹となる対外関係、北朝鮮の軍事力の現況、対応戦略などを記した文書で、1967年から2年ごと発刊されている。だが2024年はユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領による「非常戒厳」の宣言を受けた混乱で発刊されなかった。そのため、現時点での最新版は尹政権下で発刊された「2022国防白書」だ。
尹政権は前の政権と打って変わり、北朝鮮に厳しい姿勢で臨む対北強硬路線を敷いた。そのため「2022国防白書」にも変化が見られ、北朝鮮を「敵」とする表現が当時6年ぶりに復活した。白書では、「(北朝鮮で)2021年に改正された労働党規約の前文で朝鮮半島全域の共産主義化を明示し、2022年12月の党中央委員会全員会議で韓国を『明白な敵』と規定した」と指摘。「核を放棄せず、引き続き軍事的脅威を加えてきているのだから、その遂行主体である北朝鮮の政権と北朝鮮軍は韓国の敵」と明記した。
パク・クネ(朴槿恵)政権下で発刊された2016年版の白書以来の北朝鮮は「敵」とする表現について、国防部は当時、「北朝鮮の対南政策、韓国を敵と規定した事例、持続的な核戦力高度化、軍事的脅威や挑発などを総合的に考慮した」と説明した。
北朝鮮を「主敵」と初めて明記したのは1995年刊行の白書だった。前年の南北実務接触時に北朝鮮側の代表が「戦争が起きればソウルは火の海になる」と発言したことがきっかけで、「主敵」の表記は2000年版の白書まで続いた。南北に和解ムードが広がると2004年版白書では「直接的な軍事脅威」に表現が変わり、保守系のイ・ミョンバク(李明博)政権下で発刊された2008年版では「直接的で深刻な脅威」と記された。「敵」との表現も復活したが、対北融和路線を敷いたムン・ジェイン(文在寅)政権下の18年版、20年版では削除された。
「2022白書」は、北朝鮮に厳しい姿勢を取る尹政権の方針が反映され、またも「敵」との表現が復活したが、南北の軍事境界線がある非武装地帯(DMZ)近くに住む韓国の住民たちからは当時、「なぜ政府からあえて北朝鮮を挑発するのかわからない。『敵』だと表記すれば、当然、(北朝鮮から)軍事的挑発がなされる可能性があるのではないか」などと懸念の声が上がった。
今年末に発刊予定の「2026国防白書」は、昨年6月に発足したイ・ジェミョン(李在明)政権下で初となる国防白書だ。李政権は冷え込んだ北朝鮮との関係を和解と協力へと転換すべく、「朝鮮半島の平和共存」の方針に基づき対話を模索。しかし、南北を「敵対的な2国家」と位置付ける北朝鮮が拒否しており、これまでのところ、目に見える形での進展は見られない。
李政権が北朝鮮との対話を重視していることから、当初、「2026国防白書」では「敵」との表現から変更があるのではとの見方が広がった。しかし、国防部は今月18日、「北韓(北朝鮮)を敵とみなさない方向で検討しているとの報道は事実ではない」とし、「北韓政権と北韓軍がわれわれの敵であるという立場に変化はない」と強調した。韓国紙の中央日報は「国防部が表現維持に重きを置く背景には、最近の北朝鮮による対南敵対政策の強化があるとの分析が出ている」と解説した。前述のように、北朝鮮は南北関係を「敵対的な2つの国家」と位置づけ、韓国を「第1の敵対国」と呼ぶなど、対韓強硬姿勢を強めている。
一方、統一部の当局者は18日、「朝鮮半島の平和共存は李在明政権の確固たる政策目標だ」とし、「北朝鮮を主敵と規定した状態で北朝鮮と平和共存を追及することはできない」と指摘。発刊に先立ち国防部が各省庁の意見を取りまとめる際、統一部として表現の変更を求める意見を提出する方針を明らかにした。
中央日報は「新たな国防白書の対北朝鮮の表現をめぐり、国防部と統一部の立場の違いが表面化しており、今後の調整過程に関心が集まっている」と伝えている。
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