<W解説>韓国・高校野球部の掛け声が波紋=「民主化運動を侮辱」と批判高まる
<W解説>韓国・高校野球部の掛け声が波紋=「民主化運動を侮辱」と批判高まる
韓国・ソウル市内の高校の野球部が、先月行われた大会の試合中に1980年の「クァンジュ(光州)事件」をやゆする不適切な掛け声をしたとして、6か月の出場停止処分を受けた。光州事件では、南西部の光州で軍事政権に抗議して民主化を求めた学生や市民が軍と衝突し、240人以上の死者・行方不明者を出した。韓国では、事件勃発から46年を迎えた今年5月18日にスターバックス・コリアが実施した販促キャンペーンが同事件を揶揄するものだとして大きな批判を浴びた。停止処分を受けた高校の野球部員たちはこの不祥事に関連し、対戦相手の光州市の高校のベンチに向かって「スターバックスに行かないと」などと叫んだ。この言動がスタバ騒動を連想させ、民主化運動を侮辱するものだとして批判が高まっている。韓国紙のハンギョレは今月3日掲載の社説で「10代のゆがんだ歴史認識とヘイト(憎悪)・嘲笑の文化がいかに深刻なのか如実に示す事例だ」と指摘した。

光州事件は、韓国では一般的に「5・18民主化運動」と呼ばれ、韓国の民主化の歴史を語る上で欠かせない出来事として記憶されている。だが、事件勃発から46年を迎えた今年5月18日、スターバックス・コリアが行ったコーヒータンブラーの販促キャンペーン「タンク・デー」が事件を侮辱するものだとして波紋を呼んだ。事件では民主化を求める学生や市民に対し、軍はタンク(戦車)を使って弾圧した。タンブラーの販促イベントは意図的に光州事件に結び付けようとしたものではなかったというが、批判の高まりを受け、キャンペーンは開始から数時間後に中止となり、同チェーンを運営する新世界グループはスターバックス・コリアのCEO(最高経営責任者)を即解任した。

しかし、世論の反発は収まらず、光州市やソウル市の店舗を中心に不買運動に発展したほか、スターバックスカードの未使用のプリペイドチャージ金の返還を求める支払い命令申し立てが裁判所に提起されたり、デリバリー運転者らの労働組合がスターバックスの商品の配達拒否を宣言したりするなど、過熱した。

先月22日には国内の全店舗で営業時間が短縮され、全従業員を対象に歴史認識に関する研修が行われた。報道によると、店員らは店舗ごとに歴史認識などに関する大学教授の講義映像を視聴。1950年代以降に起きた韓国の近現代史の出来事を振り返りつつ、それをどのように正しく認識すべきかについて学んだという。研修について、公共放送KBSは「スターバックスは韓国で最も多いコーヒーチェーンの一つで、会社側は今回の問題が消費者の信頼に与える影響を重く受け止めているものとみられる」と伝えた。

こうした中、先月29日に行われた韓国でも最も長い歴史を持つ高校野球大会「青龍旗全国高校野球選手権大会」でソウル市にあるペジェ(培材)高校の選手たちが対戦校の光州第一高校のベンチに向け、「行こう、行こう、スターバックスに行こう」「タンクデー」などと叫んだ。映像がインターネットやSNSを通じて拡散するや、選手たちの掛け声はスタバ騒動を連想させ、光州事件を侮辱するものだとして批判が高まった。

培材高校側は先月30日、謝罪文を発表。「今回の事態を単なる逸脱やミスではなく、倫理意識や歴史認識における相対的な崩壊から生じた事態と捉え、深刻に受け止めている」などとした。

教育部やソウル市教育庁も今回の問題を問題視している。チェ・ギョジン長官は1日、「5・18光州民主化運動をおとしめ、地域を蔑視する応援が、高校スポーツの現場で露骨に噴出したということが本当に残念だ」とした。また、「生徒である選手たちがまず学ぶべきは(野球の)実力ではなく、品格だ」と指摘した。

大韓野球ソフトボール協会は1日、緊急の委員会を開き、同校野球部を全国大会の出場停止6か月とすることを決めた。また、協会は今後、学生選手らに正しい歴史認識を持ってもらうための教育プログラムを導入することを検討しているといい、関係省庁と協議する方針だ。

韓国紙のハンギョレは3日掲載の社説で、「公正な競争と相互尊重を学ぶべき学生スポーツ大会が、差別とヘイトの場に転落したのだ」と指摘。10~20代の学生世代がオンライン上などで光州事件などを戯画化し、嘲笑の対象とするようになって久しいとし、「政府全体で特別な対策を講じなければならない」と訴えた。
Copyright(C) wowneta.jp