<W解説>韓国、犬食禁止法の全面施行は来年も、暑い時期に食する文化は既に衰退(写真はサムゲタン(参鶏湯))
<W解説>韓国、犬食禁止法の全面施行は来年も、暑い時期に食する文化は既に衰退(写真はサムゲタン(参鶏湯))
韓国で食用のための犬の飼育、食肉処理などを禁止する「犬食用終息法」の全面施行まで約7か月となる中、韓国紙の朝鮮日報は今月13日掲載の記事で、「韓国の暦で最も暑い時期とされる『三伏』の始まりである『初伏』まであと5日と迫った10日の正午、ソウル市チョンノ区のあるポシンタン(補身湯、犬肉の鍋料理)店は閑散としていた」と伝えた。長年、犬食文化が根付いてきた韓国では、補身湯が滋養食として「三伏」に食されてきた。同紙は「まだ犬食用終息法が全面施行されていないにも関わらず、客は犬肉の販売が禁止されたと誤解しているようだ」と話す補身湯店の店主の声を伝えた。

犬肉を食べる文化が根付いてきた韓国だが、近年は若者を中心に犬食は敬遠され、犬食文化は薄れてきていた。「犬食用問題の議論のための委員会」が2022年に全国の18歳以上の男女1514人を対象に行った意識調査では、「犬食文化を継承すべき」との回答は28.4%にとどまった。一方、「犬を食肉用として処理することの合法化に反対」との回答は52.7%に上った。

犬食文化が敬遠されるようになった背景には愛犬ブームがある。韓国も日本同様、飼い主は犬を家族の一員として大切にしている。愛犬ブームの中で犬のホテル、カフェ、美容院など愛犬サービス業が次々と生まれ、愛犬と一緒に旅を楽しむツアーなども人気がある。ペットとエコノミーを掛け合わせた造語「ペッコノミー」という言葉も定着した。

2021年9月、愛犬家として知られ、在任中、大統領府の公邸で犬を飼っていた当時のムン・ジェイン(文在寅)大統領が「犬の食用禁止を慎重に検討する時期」との考えを示した。このことがきっかけで、犬肉を食用とすることをめぐる議論が活発化した。

政権が変わり、文氏と同じく愛犬家として知られた当時のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、大統領選候補者の時から犬の食用自体に反対の立場を示した。

そして、尹政権下の2024年1月、韓国国会で「犬の食用目的の飼育・食肉処理及び流通などの終息に関する特別法(犬食用終息法)」が可決した。当時、国会本会議で採決が行われた際、出席議員210人中、208人が賛成、2人が棄権、反対者はいなかった。法案可決当時、動物保護団体は会見を開き、「伝統という名の下で容認され、動物福祉向上の妨げになってきた犬食を終わらせる法案の可決だ。心から歓迎する」と述べた。メディアも可決を速報した。

同法は食用を目的として犬を飼育、繁殖、食肉処理する行為、犬を原料に調理・加工した食品の流通・販売を禁止する。食用を目的に犬を殺した場合、3年以下の懲役、または3000万ウォン(約324万円)以下の罰金などが科される。同法は24年8月に施行したが、猶予期間が設けられ、全面施行は27年2月からとなっており、罰則条項はこの時から適用される。

しかし、同法施行以降、各地の食用犬飼育農場は相次いで廃業した。朝鮮日報が農林畜産食品部(部は省に相当)の統計として伝えたところによると、24年10月時点で1537か所あった韓国の犬飼育農場は、25年12月には333か所に減少した。同紙は「今年に入ってさらに61か所が廃業した。(法施行から)2年足らずで全農場の82%が門を閉じたことになる」と指摘した。

食用犬飼育農場の多くが廃業したことにより、犬肉の卸売価格が上昇。今年の「三伏」は犬肉を合法的に食べることができる最後の三伏となるが、同紙は閑散とするソウル市チョンノ区の補身湯店街の様子を写真付きで報じた。犬肉の卸売価格の急騰により、補身湯の価格は半年間でおよそ2倍に跳ね上がったという。同紙は「(卸売価格の)値上がり分を客に全て転嫁することはできないので、売っても手元に残る利益はほとんどない」と話す、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)ゴジョンブ(護政府)市の補身湯店主の声を伝えた。

「犬食用終息法」の全面施行まで約7か月となる中、これまで補身湯を提供してきた店はヨムソタン(ヤギのスープ)や、日本でも人気があるサムゲタン(参鶏湯)などを看板メニューに掲げるようになってきている。
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