<W解説>韓国大統領が朝鮮戦争の終戦へ協議提案=野党は反発、北朝鮮は反応なし
<W解説>韓国大統領が朝鮮戦争の終戦へ協議提案=野党は反発、北朝鮮は反応なし
韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は今月15日、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典で演説し、現在も形式的には戦争状態にある北朝鮮との休戦交渉に向けた多国間協議に言及した。李氏は戦争を終結させ、朝鮮半島の不安定な休戦体制を平和体制へと転換することを目指すとした。一方、野党からは「非核化なき終戦は、北朝鮮の核を認めることになる」などと反発の声が相次いでいる。北朝鮮はこれまでのところ、李氏の発言に反応を示していない。

李氏は昨年6月の大統領就任以来、南北関係の修復を試みてきた。昨年の光復節の演説では、北朝鮮との関係について、体制を尊重し、吸収統一を目指さず、敵対行為をしないとする「対北3原則」を打ち出した。しかし、北朝鮮は韓国について「最も敵対的な国」とし、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記は「徹底的に排斥し、無視する」と表明。李氏は北朝鮮との対話再開の糸口をつかめずにいる。

今年の光復節の式典で李氏は、昨年打ち出した「対北3原則」から一歩進め「原則を越えて実践に進むための青写真を示す」とし、北朝鮮に対し「戦争を終わらせ、不安定な休戦体制を平和体制に変えるために当事者間の議論を始めましょう」と呼び掛けた。韓国紙の東亜日報は「李氏は『当事者』が誰かを具体的に示さなかったが、南北だけでなく、南北と米国による3者対話、または中国を加えた南北米中の4者対話を念頭に置いたものとみられる」と伝えた。通信社の聯合ニュースは「李大統領が休戦交渉に向けた多国間協議に言及したのは事実上初めて」と報じた。

李氏による朝鮮戦争の「終戦提案」に、野党からは批判の声が上がっている。最大野党「国民の力」のナ・ギョンウォン議員は「国家の安全保障体制を自ら崩壊させる危険極まりない自傷行為だ」とし、「李大統領の不純な終戦提案は李政権の終焉(しゅうえん)、すなわち『終命宣言』を早めることになるだろう」と非難。「非核化」を伴わない終戦宣言について「停戦協定における管理の主体である国連司令部の地位低下や解体圧力、在韓米軍の撤退へとつながるだろう」と懸念を示した。同党のアン・チョルス議員は自身のSNSに「韓国政府が北核(北朝鮮の核保有)を公式に認めることになれば、われわれも当然、核を保有しなければならない」とつづった。その上で、「北朝鮮だけが核を保有している現在の状況では、われわれがいくら融和的な態度を示しても、北朝鮮は敵対的な態度を捨てない。既に複数の大統領の在任期間に立証された事実だ」と指摘した。

李氏の発言について、韓国紙のハンギョレは16日掲載の社説で、「朝米関係の進展を契機として南北関係の雪解けを目指す『ピースメーカー・ペースメーカー論』からさらに一歩踏み込み、戦争当事者である南北米中による『多者対話』を通じて、行き詰まった朝鮮半島情勢を解決しようという趣旨だと読み取れる」と分析した。社説は「もちろん、『敵対的な二国間』を掲げて中国やロシアとの関係の強化ばかりに力を注ぐ北朝鮮がすぐに応じてくることは期待し難いのは確かだ」とした上で、「南北が平和共存しうる環境の整備に努める一方で、やはり当事者である米中の積極的な支持を引き出すために最善を尽くすべきだ」と主張した。

こうした中、米国のトランプ大統領は15日(現地時間)、自身のSNSに2019年の米朝首脳会談で金総書記と並んで立つ写真を掲載。「正恩氏と私は非常にうまくやっている」と投稿した。また、翌16日には、米韓両軍が現在実施中の合同演習について、規模の大幅な縮小を指示した。金氏と自身が「非常に良好」な関係であり、「敵対的なシグナル」を送らないためだとしている。

前出のハンギョレ社説は、李氏の多国間協議の呼び掛けに北朝鮮が応じる可能性は非常に低いと思われるとした一方、「米中が関心を示せば状況は変わりうる」と指摘。前述したトランプ氏のSNS投稿を紹介した上で「まだ(トランプ氏は)朝米対話の実現を諦めていないのだ」とし、「朝鮮半島情勢の安定を望む中国の習近平国家主席にとっても、この議論(多国間協議)を拒む理由はない。9月の国連総会などの外交的な機会を積極的に生かし、まずは米中の支持を引き出してほしい」と訴えた。

一方、北朝鮮はこれまでのところ反応を示していない。北朝鮮では今月15日は「祖国解放の日」で、翌日にかけての朝鮮中央通信や朝鮮労働党の機関紙・労働新聞といった現地の国営メディアは、15日に北朝鮮の各地で行われた記念行事を中心に報じた。

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