<W解説>韓国、対米投資1号案件を今月中に発表できるか=進捗にトランプ米大統領はいら立ち?
<W解説>韓国、対米投資1号案件を今月中に発表できるか=進捗にトランプ米大統領はいら立ち?
韓国紙の東亜日報は今月19日、「韓国と米国が昨年の貿易交渉で合意した2000億ドル(約29兆円)規模の対米投資プロジェクトの発表が遅れ、不協和音が生じている」と報じた。韓国政府は、第1号投資案件を今月末に発表することを目指して米国側と協議を進めているが、韓国紙の中央日報は、韓国とほぼ同時期に5500億ドルの対米投資を約束し、今年に入って既に6件の投資を発表した日本と比較し、「進捗(しんちょく)状況を見ても韓日間の差は明確だ」と指摘した。トランプ米大統領は16日(米東部時間)、現在実施中の米韓合同軍事演習について規模を大幅に縮小するよう指示したが、この背景の一つには、韓国の対米投資実行が遅いことへのトランプ政権の不満があるとの見方がある。

昨年1月に発足した第2次トランプ政権は、米国の製造業の基盤強化や製造業の米国回帰などを目的に、さまざまな関税措置の発動を進めている。高関税をちらつかせられた韓国は、昨年10月の米韓首脳会談で、相互関税の税率引き下げと引き換えに、米国に3500億ドル規模の対米投資をすることで合意した。当時、韓国メディアは、「交渉が合意に至ったことにより、前年比13%前後の減少が予想されていた韓国企業の対米輸出は胸をなでおろすことになった」「がけっぷちの局面でも忍耐と知恵により被害を最小化した韓国政府の交渉チームと企業の努力が勝ち取った劇的合意だ」(いずれもイーデイリー)などと伝えた。

これを受け、韓国与党「共に民主党」は昨年11月、3500億ドルの対米投資に必要な対米投資特別措置法を国会に提出した。だが、法案の手続きをめぐって野党と意見が異なり、審議が停滞した。

こうした中、トランプ氏は今年1月、米国との貿易協定で合意した内容を韓国国会が承認せず、履行していないとして、自動車や医薬品などの輸入品について、関税率を再び15%から25%に引き上げると警告した。トランプ氏は当時、自身のSNSに「イ・ジェミョン(李在明)大統領との間で両国にとって素晴らしい合意に達したのに、韓国の議会が承認していない」と不満を吐露した。

これを受け、韓国国会は与野党議員で構成する特別委員会を設置して法案の早期成立を急いだ。そして3月、「対米投資特別法」が国会を通過し、6月に施行した。同法は対米投資実行の法的な裏付けとなるものだ。造船、半導体、医薬品、人工知能(AI)などを優先投資分野に指定。3500億ドルの投資のうち、1500億ドルはトランプ氏が復活を目指している造船分野に投じる。

韓国は現在、造船業協力に割り当てられた1500億ドルを除く、残りの2000億ドルの投資先について、米国と最終段階の協議を進めている。これが、対米投資第1号となるが未だに具体的な輪郭が見えず、米国側はいら立ちを募らせている。米政治専門メディアのポリティコが17日(現地時間)、消息筋の話として伝えたところによると、ある消息筋は「韓国との交渉がトランプ政権の予想よりも進捗が遅い」と不満を示し、その進捗状況は米国がこれまで交渉してきた国の中でも特に遅いと指摘をしたという。

現在、米韓両軍は朝鮮半島有事を想定した定例の合同軍事演習を実施しているが、トランプ氏は17日(現地時間)、演習の大幅縮小を国防長官に指示。これを受け、27日までの予定だった演習を、本日21日までに短縮することが決まった。トランプ氏が演習縮小を指示した背景には、韓国が約束した対米投資の進展の遅さに対する不満があるとの見方も出ている。

韓国政府はこれまで、対米投資第1号プロジェクトとしてエネルギー分野を優先的に検討してきた。一方、米国は韓国の半導体大手サムスン電子やSKハイニックスのメモリ半導体の米国内での生産拡大を突如要求してきたとの一部報道があるが、韓国政府は否定している。

韓国紙の東亜日報は「交渉が難航するほど、米国の要求と圧力は強まらざるを得ない」と指摘。その上で「対米投資交渉は、原子力潜水艦のような安全保障協議にも影響を及ぼしかねない」と懸念を示し、「韓国政府は通商問題が安全保障問題に飛び火しないよう、総力を挙げなければならない」と訴えた。

米韓双方は今月末までに協議を終え、第1号プロジェクトの発表を目指す考えだ。
Copyright(C) wowneta.jp