韓国は1980~90年代にかけて、国内経済の急成長と共に、海外の文化や食習慣が浸透する中でコーヒー文化が広がったとされる。採用プラットフォームKORECが運営するコラムに掲載の記事によると、韓国料理は辛く、濃いものが多いため、食後にコーヒーを飲むことで口の中をさっぱりさせるというニーズもコーヒー人気を後押ししたという。2000年代以降は、健康志向の高まりの中で、コーヒーのカフェインが脂肪燃焼効果を持つことが注目され、コーヒーが「健康に良い飲み物」との新しいイメージが定着したほか、海外のカフェチェーンが次々と進出。今やカフェに立ち寄って一息ついたり、仲間と談笑したりして過ごすことは、韓国人の生活の一部となっている。
韓国のコーヒー産業の市場規模は18年以降、年平均5.2%のペースで成長。豆の品質を重視するプレミアム消費と、低価格・大容量を求める実利消費が同時に拡大している。消費拡大はコーヒー専門店の増加にもつながっており、2023年時点で韓国内のコーヒー専門店は10万6452店と、前年比5.7%増。24年には10万7055店に上った。
このうち、50%以上を占めているのがスターバックスだ。コーヒー専門店の関係者の間では「スターバックスと残りのブランド」と言われるほど圧倒的なシェアを誇る。
しかし、スターバックス・コリアは今年5月、大きな騒動を引き起こした。同社は1980年に韓国で起きた民主化運動「光州事件」から46年となった同月18日、コーヒータンブラーの販促キャンペーン「タンク・デー」を行った。しかし、「タンク」との言葉が「戦車」による弾圧を連想させるとして批判が高まった。
当時、南西部の光州で武装した市民が軍と衝突し、多数の死傷者が出た。軍はタンク、即ち戦車を使って市民を弾圧。光州市によると、10日間続いた市民らと軍の衝突による死者・行方不明者は240人以上に上る。ただ、正確な死者数など不明点も多い。
スターバックス・コリアのタンブラーの販促イベントは意図的に光州事件に結び付けようとしたものではなかったが、民主化運動を侮辱したと受け止められた。スターバックス・コリアはキャンペーン開始から数時間後にこれを中止する措置を取ったほか、同チェーンを運営する新世界グループはスターバックス・コリアのCEO(最高経営責任者)を解任した。しかし、世論の反発は収まらず、光州市やソウル市の店舗を中心に不買運動に発展した。6月には国内の全店舗で営業時間を短縮し、全従業員を対象に歴史認識に関する研修も行った。騒動の余波は続いており、警察は今月5日、スターバックス・コリア本社を侮辱などの容疑で家宅捜索した。
コーヒー文化が根づく韓国で、コーヒー専門チェーンとして圧倒的なシェアを誇ってきたスターバックス・コリアだが、運営するSCKカンパニーの今年第2四半期(4~6月)の純売上は7473億ウォンで、前年同期比6.1%減少した。営業損益は昨年第2四半期の403億ウォンの黒字から、今年の第2四半期は184億ウォンの赤字に転じた。スターバックス・コリアが四半期ベースで営業損失を出したのは、1999年に韓国で第1号店となるイファ(梨花)大学店がオープンして以降、初めて。韓国紙のハンギョレは「今回の業績悪化は、5月に浮上した『5・18民主化運動』冒涜(ぼうとく)論争の余波と分析される」と伝えた。
同社は、コーヒー専門店の競争が激しい韓国市場の中で、消費者の信頼を取り戻すことができるか。
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