CPTPPは、モノに対する関税の削減・撤廃、サービスや投資の自由化など、幅広い分野で経済活性化を促す多国間の協定。日本のほか、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、イギリスの12か国が加盟しており、欧州連合(EU)に迫る巨大経済圏となっている。加盟国間では関税の削減・撤廃がなされるため、輸出がしやすくなることで輸出額の拡大が期待できる。また、輸入品が安く手に入るなどのメリットがある。一方、関税の撤廃により、海外から安い農産物が流入することで、自国の農業が大きな打撃を受けることが懸念されている。また、食料自給率の低下で国力が弱まったり、安い外国人労働力の流入で雇用の喪失が生じたりする恐れもある。
韓国はかねてよりCPTPPへの加盟に意欲を見せてきた。ムン・ジェイン(文在寅)政権下の2021年12月、当時の経済副首相兼企画財政相は、「CPTPP加盟を本格的に推進するため、多様な利害関係者と社会的議論を土台に、関連手続きを開始する」と表明。「アジア太平洋地域の経済秩序の変化が活発に進み、これ以上、政府内での議論だけにとどまることはできない」として、韓国が巨大経済圏から孤立することへの危機感をにじませた。だが、当時、農業団体は「相対的に価格競争力が強い輸入農産物が増えることは、長期的に農業生産基盤の崩壊につながる可能性がある」と懸念を示し、撤回を求めた。こうした農業団体からの反発に加え、CPTPPを主導している日本との関係が当時冷え込んだことも影響して、その後、韓国内においてCPTPP加入推進の議論はしばらく停滞した。
だが、昨年6月に発足したイ・ジェミョン(李在明)政権は同年9月、CPTPPへの加盟を検討すると表明。日本をはじめ、関係各国と「必要な交渉を進める」との方針を示した。
李氏は今年1月に奈良市で行われた高市早苗首相との日韓首脳会談で、CPTPP加盟の意向を改めて示した。CPTPP加盟には、加盟12か国の合意が必要となるが、日本との交渉にあたっては韓国が続ける一部の日本産水産物の輸入規制が争点になる。
こうした中、ク・ユンチョル経済副首相兼財政経済部(部は省に相当)長官は27日に開かれた対外経済長官会議で「CPTPP加盟に関連する社会的議論と意見聴取を本格的に着手したい」と明らかにした。ク氏は加盟が国益や国民生活にとってプラスになるかを検討した上で加盟を進めるかどうかを判断する考えを示し、「農水産業の懸念と影響を把握し、加入推進の際に実効性のある国内対策も準備する」と強調した。
韓国政府がCPTPP加盟に関する社会的議論を本格化させようとしている背景には、グローバルサプライチェーンの再編や中東情勢の不確実性など、国際通商環境の急激な変化がある。産業通商部のキム・ジョングァン長官は前出の長官会議で「韓国もこうした変化の例外にはなれない」と指摘した。CPTPPには現在、インドネシアなど11か国が加盟を申請中で、キム氏は「(他国に比べ)既に議論に遅れを取っているとの指摘も一部で提起されている」と述べた。
韓国政府には今後、加盟に難色を示す農水産団体への丁寧な説明が求められるほか、日本との交渉の際には日本水産物の輸入規制が壁になりそうで、先行きは不透明だ。
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