防衛白書は、日本の防衛の現状と課題、取り組みについて国民に周知することを目的に防衛省が毎年発行しているもので、直近1年間の日本を取り巻く安全保障環境や防衛省・自衛隊の取り組みを中心に記載している。1970年に初めて発行され、76年以降は毎年刊行されている。
12日に閣議で報告された2024年版防衛白書は、中国が台湾周辺で軍事活動を活発化させていることへの警戒を前面に押し出した内容となっている。白書では中国について、日本列島から沖縄、フィリピンを結ぶいわゆる「第一列島線」を越えて、伊豆諸島から小笠原諸島、グアムなどを結ぶ「第二列島線」まで活動を活発化させ、ロシアとの連携強化の動きを一層強めていると指摘。「中台間の軍事的緊張が高まる可能性も否定できない」と警鐘を鳴らした。これに対し、中国外務省の報道官は12日、「防衛白書は中国の内政に乱暴に干渉し、いわゆる中国脅威論をあおり地域情勢の緊張を誇張したもので、強い不満と断固たる反対を表明する」と述べた。さらに、「中国の国防政策と軍事活動は正当で合理的だ」とした上で、「台湾を侵略した日本がとやかく言う資格はない」と反発した。
また、白書は、北朝鮮に関して、2023年以降、固体燃料の弾道ミサイルの発射や衛星の打ち上げを行っているとして、「質的な意味での核・ミサイル能力の向上に注力している」と記した。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻に関して、「(ロシアは)北朝鮮からの砲弾やミサイルの調達などにより、戦力を維持しているものとみられる」と指摘した。
韓国に関連する記述は、安保分野での関係改善を印象付ける内容となった。日韓の防衛協力・交流をめぐっては、2018年に海上自衛隊の哨戒機が韓国軍の駆逐艦から射撃管制用レーダーを照射された問題が発生して以降、自衛隊と韓国軍のハイレベルの交流が途絶えてきた。しかし、先月、日韓防衛相会談が開かれ、木原稔防衛相と韓国国防部のシン・ウォンシク長官は再発防止策を確認、交流を再開することで一致した。
白書にも交流再開が決定したことが明記され、再発防止策によって「防衛省・自衛隊としては、長年の懸案であった火器管制レーダー照射事案の再発防止および部隊の安全確保が図られたと判断している」と記された。昨年版の防衛白書では、この問題に関して「懸案解決のため緊密に意思疎通を図る」としていた。先月の会談での合意内容が白書に盛り込まれたことに、毎日新聞は「白書は通常、その年の3月までに起きた出来事を記載することになっており、異例の対応だ」と伝えた。同紙によると。防衛省は同紙の取材に「大きな進展が見られたので、重要性に鑑みて記述を設けた」と説明しているという。
また、今年の白書では韓国について「パートナーとして協力してくべき重要な隣国」と初めて明記されたほか、韓国関連の記述の分量も増えた。これらの変化は韓国メディアも着目しており、中央日報は白書に見られる「パートナーとして協力していくべき重要な隣国」との記述について「(日本の外務省が4月に発行した)外交青書に2010年以来、14年ぶりに登場した表現と同じだ」と指摘。「改善した韓日関係を反映した」と伝えた。
一方、白書で島根県の竹島(韓国名・独島)が「日本固有の領土」と記載されていることについて、韓国外交部(外務省に相当)は12日、報道官論評を発表。「歴史的、地理的、国際法的に明白なわが固有の領土である独島に対する不当な領有権主張を繰り返したことに強く抗議する」とした。その上で「日本政府の不当な主張は韓国固有の領土である独島に対する我々の主権にいかなる影響も及ぼさないことを改めて明確にする。独島に対する日本のいかなる挑発にも断固として対応していく」とし、日本のこうした主張が「未来志向的な日韓関係の構築に何ら役に立たないことを自覚すべきだ」と求めた。外交部のキム・サンフン・アジア太平洋局長は同日、在韓日本大使館の総括公使を呼んで抗議した。聯合ニュースは「日本が防衛白書で独島の領有権を主張するのは2005年から20年連続」と伝えた。
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