写真左から左派系最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)前代表、保守系与党「国民の力」のキム・ムンス前雇用労働相、保守系野党「改革新党」のイ・ジュンソク(李俊錫)前代表
写真左から左派系最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)前代表、保守系与党「国民の力」のキム・ムンス前雇用労働相、保守系野党「改革新党」のイ・ジュンソク(李俊錫)前代表
来月3日投開票の韓国大統領選は、今月12日から選挙戦に入っている。与野党の候補が各地を遊説し、連日、有権者に支持を訴えている。注目される候補は、左派系最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)前代表と、保守系与党「国民の力」のキム・ムンス前雇用労働相、保守系野党「改革新党」のイ・ジュンソク(李俊錫)前代表の3氏だ。各世論調査の支持率では李在明氏がかなり優位に立っており、キム・ムンス氏、イ・ジュンソク氏が追う展開となっている。

今回の大統領選は、ユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が罷免されたことに伴い実施される。ここまで、次期大統領にふさわしい人物として支持率トップを独走しているのが李在明氏だ。李氏は南東部キョンサンプクド(慶尚北道)アンドン(安東)郡(現・安東市)出身の60歳。貧しい家庭に育ち、小学校卒業後は少年工として働きながら検定考試に合格、中学・高校の卒業資格を得た。1986年に韓国の中央大学を卒業し、弁護士となった。その後、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)ソンナム(城南)市長を2007年7月1日~2018年3月15日まで務めた後、2018年7月~昨年10月25日まで京畿道知事を務めた。2022年の大統領選に立候補し、最後まで尹氏と激しい争いを見せたが、約24万票の僅差で敗れた。

大統領選2度目の挑戦となる李氏は、公約でAIやコンテンツ産業、防衛産業などの成長産業を確立することで経済大国を実現すると強調。公式の選挙運動初日の12日、ソウル中心部で演説し、「民主主義を回復し、経済をよみがえらせる」と訴え、有権者に向け「新しいスタート、希望に向けた新しい道への旅に参加しないか」と呼び掛けた。一方、李氏は複数の刑事裁判を抱えており、このことが選挙戦にどう影響するのか注目されている。

「国民の力」のキム・ムンス氏は、保守の伝統地盤である南東部キョンサンナムド(慶尚南道)出身の73歳。国会議員を1996年~2006年まで3期、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)知事を06年~14年まで2期務めた。尹政権で雇用労働相に任命された。1970~80年代には労働運動や民主化運動に参加した。「国民の力」の公認候補をめぐっては、党執行部が、無所属で出馬していたハン・ドクス前首相を取り込み、既に党公認候補に決まっていたキム氏の公認を取り消してハン氏に一本化しようとしたが、党員投票で否決された。キム氏は公認に復活したが、この一悶着(もんちゃく)も影響して出遅れた感が否めない。

そのキム氏は、「企業活動の自由」を掲げ、規制緩和や税制改革、投資の活性化による雇用創出を進めると訴えている。公式の選挙運動が始まった12日は、庶民の台所であるソウル市内の伝統的な市場から運動開始。「暮らしの大統領、経済の大統領になる」と述べた。

保守系野党「改革新党」から立候補した李俊錫氏は、ソウル市出身の40歳。2021年6月、国会議員経験がないまま当時36歳の若さで現与党「国民の力」の代表に就任し、注目を集めた。2022年の大統領選では、党代表として尹錫悦氏を支え、尹氏が大統領に勝利したことから李氏は政権与党の代表となった。李氏はその後、2023年12月に離党と「改革新党」の結成を発表。既存の保革2大政党に不満を持つ層を取り込む「第3極の集合体」をつくろうとした。昨年4月の国会議員を選ぶ総選挙に出馬し、当選を果たした。

その李氏は、若者や未来世代に向けた政策を進めることを公約に掲げているほか、19の省庁を13省庁に縮小することで、省庁の垣根を越えた対応を実現するとしている。選挙運動初日は、「共に民主党」の大票田である南西部のチョルラド(全羅道)地域を訪問。若者や未来世代に向けた政策を進めると強調した。若さを武器に、他候補との差別化を図ろうとしている。

今回の大統領選は、これまで紹介してきた3氏を中心に選挙戦が展開されており、通信社の聯合ニュースは「選挙戦序盤の現段階では3氏を『1強、1中、1弱』と見る向きが強い」と指摘。「最近発表された世論調査では、李在明氏が他の候補をリードしており、保守層の支持基盤を持つキム・ムンス氏は後を追っている。『中道保守』を標榜する李俊錫氏の支持率は1桁台ではあるものの、『国民の力』が公認候補をめぐる内紛で混乱を露呈させたことから存在感を高めている」と情勢を伝えた。
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