正義連は、慰安婦問題の責任究明や元慰安婦の名誉と人権の回復を求めるためなどとして、長年、ソウルの日本大使館近くで定例による「水曜集会」を行っている。集会は14日、1700回目を迎えた。集会は1992年、当時の宮沢喜一首相の訪韓に合わせて、正義連の前身である「韓国挺身隊問題対策協議会」が日本大使館前でデモを行ったのが始まり。会員たちが毎週水曜日に集まり、慰安婦問題に対して日本政府に抗議の声を上げてきた。
慰安婦問題をめぐっては、2015年12月、当時の岸田文雄外相(前首相)と韓国外交部(外務省に相当)のユン・ビョンセ長官(当時)が日韓慰安婦合意を交わした。この合意では、慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と表明。韓国政府が元慰安婦を支援するために設立する財団「和解・癒し財団」に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくことなどを確認した。翌2016年、元慰安婦らの支援事業を担う「和解・癒やし財団」が発足。日本政府は合意に基づき10億円を拠出した。日本政府としては、この合意により、慰安婦問題は解決済みとの立場だ。しかし、合意の無効化などを公約に掲げたムン・ジェイン(文在寅)氏が2017年5月に大統領に就任。韓国政府は2018年11月、財団の解散決定を発表し、日韓合意は事実上、白紙化した。
2022年5月、日韓関係の改善に意欲的だったユン・ソギョル(尹錫悦)氏が大統領に就任し、慰安婦問題も何らかの動きがあるかと注目された。しかし、尹氏はまず、日韓最大の懸案だった元徴用工訴訟問題への対応に乗り出し、23年3月、解決策を発表。これを機に、それまで「戦後最悪」と言われるまでに冷え込んでいた日韓関係は劇的に改善した。しかし、慰安婦問題に関しては大きな動きはなく、日韓関係改善に尽力してきた尹氏は、昨年12月に国内に向けて「非常戒厳」を宣言したことで弾劾訴追され、先月、憲法裁判所は尹氏の弾劾は妥当だと判断し、尹氏は罷免された。これに伴い、6月3日に大統領選が行われることになった。慰安婦問題の対応は、次期政権に持ち越される。
正義連は今月14日、大統領選後に決まる新リーダーに慰安婦問題の解決に積極的に乗り出すよう訴えた。元慰安婦で、長年、この問題を訴え続けてきたイ・ヨンス氏は同日開かれた「水曜集会」に参加。イさんは、日本政府に賠償を求めた訴訟で、原告の元慰安婦が勝訴したのにも関わらず、日本側は反応を示さず、韓国政府からも放置されていると訴えた。慰安婦訴訟をめぐり、先月、中部のチョンジュ(清州)地方裁判所は、元慰安婦の遺族の訴えを認め、日本政府に損害賠償を命じる判決を言い渡した。同様の裁判で日本に賠償を命じる判決が出たのはこれが3件目だ。しかし、前述のように、日本政府としては、慰安婦問題は2015年の日韓合意により解決済みとの立場で、清州地裁での判決を受け、日本の外務省の岩屋毅外相は談話を発表。「判決は、国際法と日韓両国間の合意に明らかに反するものであり、極めて遺憾で、断じて受け入れることはできない」とした。その上で、韓国に対し、「国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講じることを改めて強く求める」とした。一方、同地裁は本日15日、4月の判決が同日確定したと明らかにした。
大統領選後、新大統領が慰安婦問題にどのように対応するのか注目されるが、各世論調査で、次期大統領にふさわしい人物として支持率トップを独走しているイ・ジェミョン(李在明)氏は12日、前日に死去した元慰安婦のイ・オクソン氏を追悼するメッセージをSNSに投稿。李氏はその中で、慰安婦問題について「歴史的事実の究明と名誉回復、そして被害者支援のために、より一層努力する」とした。
これに先立ち、李氏は9日、日韓関係がテーマの討論会に祝辞を贈り、日韓関係を重視した前政権に続き、連携を維持する考えを示した一方、歴史問題に関しては「未来志向の関係構築のために必ず解決しなければならない」と強調した。
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