日常的に使われている道具類に、誰もが想像できる動物の名前が付いている物があります。

例えば大きな建物の建設現場で使われるクレーンのことをフランスでは「鶴」(Grue)と言います。
細長い立ち姿からでしょうか。また水道管が詰まったり、掃除をする際に活躍する、グルグルとスパイラルになった金具の先に取っ手がついた道具、たわみ継ぎ主管のことを「フェレット」(Furet)と言います。
狭い空間をスルスルと通り抜けられるイメージから来ているのでしょう。

 さて、とあるブルゴーニュワインの生産者が、自らの醸造所で壁やそこらに置いてある道具について訪問に来ていた外国人に説明をしていた時のことです。
 長さが大人の背丈ほどある金物の筒についてこう説明しました。
「これはうちではキリンと呼んでるんです」。
両端の直径が異なる長い形が、首の長いキリンを想像させたのでしょう。
 タンクの中で発酵中のぶどうの様子を見るのに使うそうですが、「うちでは」と言っていたように、どうやらこの「キリン」という呼び名は、この生産者の下で働く人たちだけの間で使われ通じているようです。

実際インターネットで「キリン」に「道具」で画像検索してみると、円盤に竿が付いたような、床や天井を掃除する道具が出てきます。
その場にいた訪問者たちがキリンの話は軽く流して忘れるか、「うちでは」という言葉を逃していなかったことを願います。

 ところでフランスで「ナポリタン」といえば、多くの人はまず有名なお菓子メーカー「LU」からも出ている、スポンジが何層かに重なっているお菓子を思い浮かべるはずです。
間に薄くクリームが挟まっていたり、表面にチョコレートコーティングがされていたりします。

 他の国の人に「あなたの好きなものは?」と好みを聞くなら、互いに同じ物のことを言っているのか確認の意味も込め、それがどのような味や材料のものなのかを言葉に出してみるのが無難でしょう。


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